AIIB 米国は白旗

米国は、中国主導のAIIB(アジアインフラ投資銀行)を、米国主導のアジア開発銀行(ADB)に対する挑戦と捉え、日本、欧州にも参加しないように呼びかけていた。しかし、米国の国際影響力の衰退(口は出すが金は出さない)、中国の影響力の拡大(口を出すが金も出す)のもと、英国が参加を表明。これを皮切りに独仏伊と主要国が雪崩を打つように参加を表明。今後東南アジアで進むインフラ事業に加われなくなるのを恐れたからである。
肝心のADBもAIIBへの協力を検討、日本政府内に参加容認論が出るようになり、米国も「既存の国際開発機関を補完し、効果的に機能することで国際社会に利益をもたらす」とのコメントを出さざるを得なくなった。
日本政府は「借り手の財政持続可能性や環境に十分配慮した質の高い基準がクリアされない限り、協力には慎重にならざるを得ない」とコメントしている。
AIIBは理事会を常設せず、中国の元財政次官が総裁に就任、中国の影響下にある事務局の権限が大きく、ガバナンスには疑問符がつく。環境や投資先の財政余力の審査が、アジア開発銀行世界銀行の基準を下回るものになれば、審査の緩いAIIBに案件がどんどん流れていき、ADBの地盤沈下を招きかねない。
米国は欧州に参加を思いとどまるよう促したのに対し、欧州は「むしろ内部に入って改善を図った方が良い」と弁解したようだが、しかし欧州に発言権はほとんどない。
こういった多国間機関での発言力は、出資割合によって決まるが、AIIBはアジアが総額75%とアジア以外が総額25%と決まっているため、欧州各国がどれだけ参加しようと15%以上を占めることはできない。アジアの中では中国の出資割合がダントツの4割で、インドも1割にすぎない。日本が加入すれば、中国の出資割合は減るが、それでも日本が1割、中国は3割を占める。