米 中国を為替操作国認定を先送り

財務省 中国の為替操作国認定を先送り

 10月15日、米財務省は、主要国、地域の為替政策に関する半期報告書の公表を見送ると発表した。中国が為替操作をして、人民元を4割ほど低く抑えていると非難し、報復関税をかけるよう主張する議員が多い。既に下院では報復関税法案が可決され、上院でも法案審議を求める議員が少なくない。それでも、見送ったのは、9月上旬から中国が為替相場上昇を加速させていることをガイトナー長官が評価したからだというの財務省の公式見解だ。
 しかし、中国が元売り介入をすることは、イコール中国が米国債を買うことであり、このことで米政府が助かってのも事実だ。15日の米政府の発表によれば、10年度の財政赤字は1兆3000億ドル近くなるという。米GDP比で8.9%。09年度の10%に比べればましだが、リーマンショック直後の09年からわずか1.1%しか下がっていないことの方を重く見るべきだろう。中国が米国債を買わなくなれば、米国債の売れ行きが悪くなり、米国債金利を上げて売りに出す必要がある。こうして長期金利が高くなれば、米国財政は悪化するし、高金利を求めて短期的にはドル高になる。

米国民は小さな政府志向

 ただそうした理屈を議会が分かってくれるかというと、そうも行かない。米国は伝統的に小さな政府指向が強い。米国債が売れなければ、発行を減らせばいいだけの話じゃない、ということになる。米政府が行った7800億ドルのTARP(不良資産救済プログラム)も、最初は名前の通り不良資産を買い取るプログラムだったのが、いつの間にか銀行への公的資金注入プログラムに変質してしまった。米国内では、オバマはチェンジと言って大統領になったけど、何にもチェンジしていないじゃない、という声が共和党支持者にも民主党支持者にも多い。まして今年は中間選挙の年だ。国民の声に神経質にならざるを得ない。

中国の反撃

 中国も黙って見ている訳ではない。温家宝首相は10月2日、アテネパパンドレウ首相と会談し、ギリシャが新たに発行する国債を買い増す考えを表明し、欧州から感謝を受けた。中国は、金で解決できるものは解決しようと考えている。
 そもそも、米国は中国のことを為替操作国だというが、米国だって人のことは言えない。財政支出だ、量的緩和だと、とにかくドル札を印刷しまくり、そうした金が世界にばらまかれる。ドルを刷れば刷るほどドル安になるのが道理だ。商品の価格は需要と供給で決まる。需要が増えないのに供給だけ増やせば価格が上昇する。
 そして、こうした世界にばらまかれたドルが世界各地でバブルを生んでいる。中国は、こうした投機マネーを熱銭と呼んでいる。中国政府は銀行への窓口指導で、不動産融資を抑えているのだが、熱銭がどんどん中国に入ってくるため、不動産価格の騰貴を押えきれないでいる。中国からすれば「そっちだって為替操作をしているだろう。おかげでえらい迷惑だ」と言うことが可能だ。(日本政府も米国に頭ばかり下げてないで、言うべきことを言ったらいい)

ブラジルも中国を援護射撃

 さらに応援団もいる。ブラジルだ。ブラジルも米国の熱銭=ホットマネーが流入し、物価が高騰している。ブラジル中央銀行メイレレス総裁は、IMF総会が閉会した10月8日。「最近の大きな相場変動は米国など先進国の金融緩和政策で生み出された余剰のドルに原因がある。」と批判。同総裁は「ブラジルは好調だ。しかし他国の現状が良くないからといって、わが国が過剰な負担を負うことはできない」「ブラジルにはこうした不均衡から自国を保護する措置が必要だ」と述べた。