中国中小企業 大量倒産

大量倒産の足音

 日経7月25日付夕刊が、中国の中小企業の大量倒産の状況を次のように告げている。「中国広東省などで玩具や繊維などを生産輸出する企業の生産、輸出する中小企業の操業停止や倒産を伝える情報がこれまでになく広がっている。原材料や人件費のコスト増と人民元高が経営を圧迫していると言う。中国に足元の倒産動向を正確に把握する統計はない。政府は大量倒産は否定しつつも、中小企業の厳しい状況の厳しい状況は認め、支援策の検討に乗り出した。」
7月25日付日経も、靴やライターを生産する浙江省温州市で企業の2割が操業停止か大幅減産に追い込まれたとの温州中小企業発展促進会会長の発言を伝える。

「銀行から借りられない」

 7月19日付日経「減速中国経済・下」でも、日用品生産の民間中小企業が集中する温州市では、2割が休業か半操業停止の状態だという。同記事は「中小企業はもともと銀行からの借入が難しいが、最近はさらに困難になった。このままでは年内に大規模倒産が起きかねない」との業界団体の声を紹介する。銀行が貸さないとなると、ノンバンクからの借り入れになるが、金利は年20%超と、サラ金金利並みだ。急成長が見込めない現在、このような金利で運転資金を借りなければならないとなれば、経営の破たんは必至だ。

国進民退

 中国には「国進民退」という言葉がある。国有企業だけが栄え、民間企業が窮迫している現状を表現している。国有企業が栄えれば、大株主である国は多額の配当が貰えることになる。そのため、政策も国有企業に利益を誘導する形で進められていくことになる。米フォーチューン誌の世界企業500に、中国本土から57社がランク入りしたが、民間企業は華為技術と江蘇沙鋼集団の2社のみ。中国企業連合会発表の売上高トップ100にも民間は4社だけ。
銀行の多くは国有。国有の銀行が国有企業への融資を優先する。中国人民銀行は、物価抑制のため利上げや預金準備率を、政府は融資の抑制の窓口指導を行っているが、こういった金融引き締めのしわ寄せを受けているは中小企業だ。
リーマンショック直後に行われた4兆元の財政支出は、経済危機対策という大義名分はあるが、潤ったのは国有企業だけである。

中小企業に未来がなければ、国にも未来がない

 就業人口に占める国有企業の割合は8%に過ぎず、中国で雇用を支えているのは、中小企業だ。中国には農村部を含めればなお1億人以上の潜在失業者があると言われ、中小企業の大量倒産が起これば、大きな社会的不安要素になる。

好転はあるか

 米国の経済回復の減速が明らかになっている現在、対米輸出も減速せざるを得ない。欧州もギリシャ危機が周辺国にも影響を及ぼしており、対欧輸出も減速が見込まれる。しかも中国国内では物価上昇が大きな社会問題となり、労賃も上昇速度を増している。