ベイナー案 茶会党の壁を突き破れず

ベイナー下院議長案否決される

 米連邦債務上限引き上げ問題で、野党共和党のジョン・ベイナー下院議長が提出した案は、同党内の反対を崩せず、米下院は採決を見送った。下院では当初、28日午後5時45分から6時15分(日本時間29日午前6時45分から7時15分)の間に、ベイナー議長の提案が採決される予定だった。同案については、共和党保守派から歳出削減幅が小さいとの強い反発があり、党内から可決に必要な支持を得られなかったとみられる。(ロイター2011年 07月 29日 15:06)
 ベイナー案は「まず、1.2兆ドルの歳出削減の決定と引換に1兆ドルの債務上限を認め、6カ月後に超党派の特別委員会でさらに1.8兆ドルの歳出削減と1.6兆ドルの上限引上げを再検討するのが柱」となっている。民主党はこのベイナー案が共和党が多数の下院で可決されても、民主党多数の上院で否決すると明言しており、ベイナー案さえ生ぬるいとする共和党との溝は埋めようがないようにも思われる。ただ民主党増税を断念しており、その部分では共和党の周医長も取り入れており、それでも足りないとなると妥協の余地は極めて狭いものになる。

茶会党の壁厚し

 下院共和党議員240名のうち178人が所属するグループのリーダーのジム・ジョーダン議員は、26日、ベイナー議長案に党内の十分な支持が集まらず成立は困難との見方を明らかにしていた。
 このグループには昨年秋の中間選挙に旋風を巻き起こした茶会党の支援で当選した90人近い新人の多くが参加している。彼らは、債務上限額の引き上げと歳出削減をセットにしたベイナー案については歳出削減が足りないと批判している。
 もし8月2日までに債務上限の引き上げが合意されない場合は、既に米政府の債務は現行上限額の約14兆ドルに達しているため、デフォルトに転落することになる。クリントン政権時代にも同様の事態に立ち至った例があるが、その頃と現在とでは財政状態が全く異なる。
 クリントン時代は、共和党の強硬的姿勢が強く批判され、支持を大きく損ねたことがあり、当時を知る共和党幹部は何とか妥協したいと考えている。
 しかし、茶会党を中心とする共和党保守グループは、いわば河村たかしのような発想をしている。河村の発想は税金を下げれば、予算もその中に納まらざるを得ない、というもの。茶会党の発想も同じで、政府予算は水膨れしまくっているから、いくらでも絞れるはずで、国債に頼ることができなくなれば、自然に無駄な予算はなくなる、というものだ。彼らの辞書に妥協の文字は無いらしい。

韓国FTA批准も進まず

 韓国等とのFTAにも影響が出ている。共和党もFTAには賛成しているが、FTAの痛みを和らげるための失業者対策を定めた「貿易調整援助制度=TAA」に反対しているからだ。