マルチはクーリングオフ期間を過ぎても解約できる

MMSとワールドビジョンが一部業務停止

経済産業省四国経済産業局は14日、特定商取引法違反(断定的判断の提供等)で、業務用の携帯電話充電器の連鎖販売業者「株式会社MMS」と「株式会社ワールドビジョン」の2社に対し11月15日からそれぞれ9カ月と3カ月間、新規勧誘や契約など一部業務の停止を命じた。
当初はMMSが充電器の販売のマルチをやっていたが、途中で廃業、これと入れ替わるようにして今度はワールドビジョンが同じ事業を始めた。MMSの代表取締役がそのままワールドビジョンの代表取締役になっており、両社は実質一体の会社のようである。
両社合わせた売上高は06年9月から08年3月までで約48億円にもなり、会員数はのべ2万5000人であったという。
(MS産経ニュース2008.11.14 23:22)
両者はマルチ商法をやっており、特定商取引法によって規制されているが、契約を解除できるのにできないと言ったり、違約金的なものがかかるからと言って、契約を解除させないようにしていた。また解約を申し出されても嘘をついて解約をあきらめさせ、必ずもうかるからと断定的な表現で勧誘行為を行った等の違反行為があったため、経産省により営業の一時停止を命じられたのである。

クーリングオフ

ネットワークビジネスは特定商品取引法上、連鎖販売取引として厳しい規制が置かれている。特商法40条は、マルチに加入する契約(連鎖販売契約)と、マルチ参加者として個々の商品の販売契約(商品販売契約)の両方について、20日間という長期のクーリングオフ期間を認めている(他の契約は14日間)。そのマルチが代理店方式をとっており、代理店がランクアップし、さらに追加費用が発生する場合も20日間のクーリングオフ規定が適用される。
クーリングオフ期間がいつから始まるかであるが、契約書面受領日、それより商品引渡日が遅ければ引渡日が引渡日から。
クーリングオフ規定により解約となった場合、マルチ業者は、損害賠償、違約金を請求するできないとされている。
当然のことだが、ネットワークビジネス商法=特商法にいうところの連鎖販売取引マルチ商法である。「うちがやっているのは、マルチ商法ではなく、ネットワークビジネス」という話をよく聞くが、ゴマカシだ。ウィキペディアも、便所ではなくトイレと言っているだけと喝破している。

中途解約権

マルチにいったん加入して、クーリングオフ期間を過ぎた後も、一定の要件のもと解約権(中途解約権)が認められている(特商法40条の2)。注意してほしいのは、マルチに加入する契約(連鎖販売契約)と、マルチ参加者として個々の商品の販売契約(商品販売契約)とで、要件、効果に違いがあることだ。
連鎖販売契約(マルチ加入契約)の場合、契約後いつでも、将来に向かつて解約できる(同条1項)。受け取った商品、サービスがあればその分の支払いはしなければならないが、それ以上損害賠償を求められることはない(同条3項)。
マルチ業者取扱商品を買った場合、以下の事情がなければ、売買契約を解約できる(同条2項)。
・商品を受け取ってから90日が経っている。
・受け取った商品を転売にし消費した。
・加入者のせいで商品が滅失、紛失、毀損した。
商品売買契約を解約したとしても、損害賠償として以下に定める以上の金額を請求されることはない(同条4項)。
・買った商品をアップ(上位会員)ないしマルチ業者に返還した場合、又は商品がまだ引渡されていない場合は、商品の販売価格の10分の1に相当する額
・買った商品を返還できない場合は、当該商品の販売価格に相当する額

違法とされた行為

MMS、ワールドビジョンは、「ハッピーチャージャー」と称する携帯電話の業務用充電器のマルチをやっていた。この携帯電話充電器とは、ドコモショップやコンビニ等で携帯電話充電機が置いてあることがあるが、あれに似たものである。参加者は同社の代理店に登録することとなっており、下位の参加者の売り上げの一定割合も自分の収入になる等、典型的なマルチであった。
同社の違反行為とは次のようなものであった。
契約の際、事業の概要について記載した書面を交付すべきところを交付しなかった。
特商法上の中途解約規定によれば、クーリング・オフ期間を過ぎていてもいつでもマルチを脱退でき、商品購入後も一定条件で解約でき、適正な額の返金を受けることができるのに、
「商品を引き取ってもらう必要がある。」
「返金は全くできない」
「1年経ったら解約ができるんよ。」
「1年未満で解約すると商品代から20万円を引かれることになります。」
「宣伝費や広告費に20万円ほどかかっていて、残りの30万円しか返金出来ません。」
などと嘘をついて、契約を解約されないようにした。
「確実に儲かるから。」「勧誘をできていない人でも、1ヶ月2〜3万円の収入が必ず入ってくる。」などと、確実に利益が得られるかのごときことを言って勧誘した。
商品を買っても一定条件のもと解約できるにもかかわらずなどと、嘘を告げた。