衛星放送タダ見チューナー販売業者逮捕
有料の衛星放送を無料で見られるチューナーを販売したとして、埼玉県警サイバー犯罪対策課と東入間署は不正競争防止法違反の疑いで、10日までに男女4人を逮捕した。県警によると、改造された「B―CAS(ビーキャス)カード」の摘発は全国で相次いでいるが、チューナー本体の摘発は初めて。
(日経朝刊2015年3月11日)
本件は「技術的制限手段により、契約者以外の視聴が制限されているコンテンツの視聴等を可能にする装置を譲渡等する」行為であり、不正競争防止法第2条1項11号違反に該当します。
このチューナーは単独では衛星放送を視聴できませんが、プログラムをダウンロードすることで視聴が可能になるという代物です。だったら何で、初めからそういうプログラムが組み込まれていないのかと疑問に思われるかもしれませんが、そんなことをやったらすぐ逮捕されてしまいます。「この機械は、プログラムをダウンロードしないと、衛星放送を受信できないんですよ。」と言い逃れするために、あえてこういう仕組みにしているのです。
しかし、不正競争法第2条1項11号で規制されている「装置」は、「当該装置の部品一式であって容易に組み立てることができるもの」を含むとあります。すなわちその単体では、衛星放送を受信できなくても、他の部品(この場合はプログラム)を実装することで、衛星放送を受信できるのですから、規制対象に該当するとされたのです。
そして、不正競争防止法第21条2項4号は「不正の利益を得る目的で、又は営業上技術的制限手段を用いている者に損害を加える目的で、…第2条1項11号に掲げる不正競争を行った者は5年以下の懲役若しくは500万円以下の罰金、又はこれを併科する(法人処罰は3億円以下の罰金)とあります。
ただ、「当該装置の部品一式であって容易に組み立てることができるもの」とは、有形物たる部品を組み合わせて完成する場合を指しているように読めるため、プログラムのダウンロードと組み合わせるような場合を含むとすることは、刑罰法規の類推解釈の禁止に該当するのではとの疑問がふと浮かびます。