大麻の種の売人は無罪 買って栽培した人間は有罪の可能性

大麻種子の売人の逮捕

08年11月15日までに、インターネットを通じて大麻の種を販売していた某が、大麻取締法違反を理由に麻薬捜査官に逮捕された。
某は03年4月ころにネットに大麻種子の販売サイト「クリスタル・シーズ」を開設、外国から仕入れた大麻種子を、延べ約2100人に対し販売し、合計3200万円を売り上げていたという。そしてこの某から大麻種子を購入栽培した早大生等が逮捕された。
普通に考えたら、この売人某のほうが当然罪が重くなりそうだ。しかし、法的には栽培罪を犯した早大生のほうが主犯で罪が重く(大麻取締法24条の1で7年以下の懲役)、売人某のほうは栽培ほう助罪(大麻取締法24条の6で3年以下の懲役)に過ぎず罪が軽いのである。それにそもそも、某は無罪になりかねない。

大麻の種子の所持、売買、輸入は処罰の対象外

大麻取締法は、大麻の栽培、輸入、輸出、所持し、譲受、譲渡を禁じ、これに違反した者を5年ないし10年以下の懲役に処するとしている。
しかしここにいう「大麻」は、大麻草ないし大麻樹脂を指し、大麻種子は含まれない。というのも大麻草には麻薬成分は入っているが、種の段階では麻薬成分は入っておらず、また七味唐辛子等にも使われているため、趣旨の所持、譲渡等は法律規制の対象外とされている。

売人某の弁解

麻薬捜査官は売人某を、大麻種子の所持・譲渡では逮捕できないため、「買った人間が栽培すると知って売ったのだから、大麻栽培罪の手助けをした(ほう助)」として逮捕したのである。ただ売人某は「買った人間は育てて鑑賞するのか、食べるものだと思っていた」と弁解している。
しかし某もちょっと勉強が足りなかった。大麻取締法は、栽培一般を禁じている。鑑賞目的であると吸引目的であるとを問わない。だから「鑑賞目的で栽培する」ことを知って、ないし予想して売却したなら栽培ほう助と言えるのである。
彼の場合は、ホームページのTOPに大麻草の写真があったため「種を食用で売っていた」と弁解できなかったのだろう。もしそうだったら、種をTOPに持ってくるはずだからである。

吸ってしまえば犯罪でなくなる

大麻取締法が、おかしいのは、「大麻の研究のため使用してはならない。」としていながら(これの違反には処罰規定がある)、吸引してはならないとは規定していないのだ。
厚生労働省によると、吸引を禁止していないのは、大麻の栽培農家が自然に大麻成分を吸ってしまうことがあり、意図的に吸引した場合とこうした自然な吸引の区別が困難なためであるという。
だから若ノ鵬露鵬白露山大麻が尿から検出されても逮捕されなかったのである。

法的に不備があるのでは

大麻種子の所持を禁じると、七味唐辛子を持っていただけで犯罪になるというのが厚労省の理屈らしいが、法律を工夫すればいいのではないか。大麻種子を所持するものは、農業者であろうと、食品メーカーであろうと許可制とし、第三者に譲渡するときは必ず発芽しないよう処理するものとするよう命じればいいのではないか。
大麻の吸引についても、許可を得たもの以外の吸引を禁じる形にすればいいのではないか。

ちなみに

麻薬捜査官は警察官ではない。厚労省の役人である。ただ警察並の捜査権限、逮捕権限を持っているため、麻薬捜査官=麻薬Gメンと言われている。ちなみに、GメンのGはガバメント(government)の略である。