被害者参加制 08年12月から刑事法廷導入
被害者参加制度 08年12月以降起訴分から実施
07年6月成立した「犯罪被害者等の権利利益の保護を図るための刑事訴訟法等の一部を改正する法律案」が、08年12月以降起訴された事件について実施されることになった。
これにより、犯罪被害者やその遺族が、一定の要件の下で、公判期日に出席し、被告人に対する質問などを行うなど、刑事裁判に直接参加することを可能となった。
どういった事件に適用されるか
殺人、傷害罪などのように故意により人を死傷させた罪、業務上過失致死傷(交通事故による死傷事件)などの罪の被害者は、裁判所の許可があれば、刑事裁判手続に参加することが可能となる。
どういったことが可能か
- 原則として公判期日に出席すること(今までも傍聴席に座ることができたが、検察官と並んで座ることができる。)
- 被告事件についての検察官の権限行使に関し、意見を述べ、説明を受けること。
- 情状に関する事項について、証人(被告人以外の)を尋問すること(相手の無罪主張を覆すのは、検察官の仕事で、これには関与できないが、「情状」といって刑の重さに関する事実については自ら尋問することができる)
- 意見の陳述に必要があると認められる場合に、被告人に質問をすること(証人に対する尋問より広範な尋問が認められる)
- 証拠調べが終わった後に、意見を陳述することができるようになる(有罪であるとか、どの程度重い刑にするかについて、理由を示しながら意見を言うことができる)。
法務省が主張する、この制度のメリット
- 刑事裁判が、犯罪被害者等の心情や意見をも十分に踏まえたものとなる。
- 被害者および国民の刑事司法に対する信頼がより確かなものとなる。
- 被害者の意見が反映されることで、刑の重さも適正なものになる。
- 犯罪被害者等が刑事裁判に参加することで、被害者の名誉を守ることができ(被告人が自分の刑を和らげるために被害者の悪口を言うことがあるので)、精神的にけじめをつけることで被害からのショックから立ち直れるようにする。
- 被告人においても、犯罪被害者等の意見を直接聴くことで、反省が深まり、その後の更生の役に立つ
反対論者の意見
裁判員制度の下で、被害者参加制が導入されると、裁判員は、被害者への同情から被告人に不利な心証を形成してしまうのではないかということが危惧されている。
刑事訴訟では、有罪との確かな心証が持てないときは、無罪判決がなされなければならないという「無罪推定原則」がある。専門家たる裁判官であれば情に流されることはないが、裁判員の場合はどうしても情に流されて、有罪の確証を持てなくても有罪の判断をしてしまいがちではないかという疑問が持たれている。
裁判員は、刑をどの程度重くすべきかについても、意見を述べることができるため(米国では陪審員は有罪無罪の判断しかできず、刑の重さについての意見を言うことはできない)、重罰化する。