新旧レイク主張

前稿からかなり時間も経過し、当方の主張もかなり変わってきています。
新旧レイク問題について、これまで何件かの訴訟を経て、分かってきたのは次の点です。
 旧レイクの基本契約上の地位は新レイクに承継されていない。
 H10.11.2のクロージング日の段階では、債権は譲渡されていない。
 本件譲渡対象資産に貸金債権は含まれていない。
 本件引受対象債務に過払い金債務は含まれていない。
 新レイクは旧レイクを代理して貸付、弁済受領を行っていた

ここまで書くと「じゃあ新レイクは旧レイクの過払い金を承継していないってことじゃない」と言われてしまいそうですが、そうではありません。

まず「本件譲渡対象資産」とは何か、これはクロージング日に、売却される資産です。この日には確かに売却されていませんが、当時の社長山川丈人氏がインタビューで「二年くらいかけて債権の既存残高を移したい」と言っているように、2年くらいをかけて「債権の既存残高を移す」のがこの本件資産譲渡契約の眼目なのです。
まずは契約切換により口座の移転を進めますが、相手のあることゆえ完全に移転するのは不可能です。では切り替えられなかった貸金債権はどうなったのか。これは平成13年3月末日に売却を理由に1000億円もの貸金債権が一括譲渡されています。これについては債権譲渡登記が残っています。
新生Fは「うちは貸金債権の譲渡は受けていない。なのになんで過払い金債務を引き受けるなんてことがあるの」という訳ですが、クロージング日に譲渡されていないだけの話であって、まずは契約切換えを進め、最後は一括売却で譲渡しているのですから、新生Fの上記弁解は成り立ちません。

新生Fがいうように、確かに「本件引受対象債務」に過払い金債務は入っていません。しかし「本件引受対象債務」のリストを見てもらえれば分かるようにすべて簿価で評価されています。本件引受対象債務は簿価で算定できる資産を集めて、えいやで引き受けられる債務を集めたものなのですから、簿外債務たる過払い金がこの中に入りようがありません。
当時過払い金なんてそんな請求もされていなかったので、請求されたらされたで、そのときに精算すればいいのです。それを定めたのが11.3条です。
11.3条の見出しをみると「債務の非承継」なんて書かれていますから、「もうダメじゃん」と思われるかもしれませんが、そこで諦める必要はありません。ネットで「headings」「英文契約」をダブルで検索してみてください。条文の見出しheadingは英文契約では解釈の対象としてはならないとされているのです。英文契約はやたら長いため、ある条項を探そうとして端から端まで読む気力もないですよね。そのための検索のツールとしてheadingがあるのです。目次を見て、お目当ての条文を探すためのものなのです。ですから、見出しが条文の内容と正確に一致していなくてもいいのです。準備書面の見出しと同じで、どこに何が書いてあるかを分からせるためのものなので、解釈の対象としてはいけないのです。

11.3条はindemnification clause=補償条項と呼ばれるものです。表明補償、コベナンツ条項の違反があれば、違反者に損害賠償させるために設けられた規定です。過払い金を支払わされた新レイクが旧レイクに対して「お前の表明補償義務違反だぞ。弁償しろ。」というのがこの規定ですから、求償権を定めた規定です。債務引き受けを定めた規定では全くないのです。ですから、条文の本文をみても「債務を引き受けない」の「債務」に相当する文言はないですよね。Losses=損失という言葉あるだけです。これを新生Fは「債務」と訳してしまうという強引なことをしてしまっているわけです。
このLossesは文中の単語なのに、大文字で始まっています。大文字で始まっている語はどこかにその定義づけがされているはず。これも英文契約のルールです。それをいうと新生Fは定義をした条項を証拠で出してくるのですが、この条項の解釈についても新生Fは強引な解釈をしてきます。
でもこの強引な解釈を、なぜか多くの裁判官が認めてしまうんですね。これって完全に思考停止だと思うのですが。これが何百とある新生F勝訴判決の威力といっていいでしょう。

新生Fは「契約切換申込書」なんてものを証拠で出してきて、そこには原告の署名も押印もないのに、新生Fが「全員からこれをとった、原告の分も取ったけど古いから捨てちゃった」というと、裁判官はみんな成程成程と言って認めてしまいます。「証拠評価がそんな緩くていいの?」と思いますが、高裁裁判官もすべてそういう判断です。これも何百ものレイク勝訴判決の威力としかいいようがありません。
ただ、こんな「契約切換申込書」は無視して結構です。だって、こっちは契約上の地位の承継を主張している訳でも、法的主体の変更を知らなかったなんて主張している訳でもないのですから、全く関係なし。

それでは、最後の論点、法的主体が異なる契約に基づく取引の一連性が認められるかどうかです。
別に認めるのに何の不都合もないでしょう。クオークローンとプロミスの契約切換え判決で最高裁もそれを認めているんですからね。
ただ、これを論証するのに次の三段跳び論法を使って下さい。
取引を次の3段階に分けます。
 ホップ  旧レイク時代の取引
 ステップ クロージング後の契約切替前の取引
 ジャンプ 契約切替後の取引
ホップとステップが一連の取引なのは当然です。
問題はステップとジャンプですがこれも一連です。
だって「本件資産譲渡契約当時」から、もう契約切替する目的で、貸金業の代理を行い、当初の想定通り切り替えているのですからね。
※この点はCFJのタイヘイ、ユニマット取引の一連性にも使えますよ。
契約切替前後で他人勘定の貸付を自己勘定の貸付に切り替えたのですが、新レイクは旧レイクの貸金業務を代行しているのですから、右のポケットのものを左のポケットに入れ替えるようなものです。

いくつか端折っている点がありますが、そこは創意工夫でつなげてください。

私はイケル主張だと思うのですが、たかが債務系の事務所の弁護士が主張しても裁判官は振り向いてくれないので、消費者委員会のビッグネームの先生方がどんどんこうした主張で、最高裁まで戦ってほしいものです。調査官も、そういう名前を見たらじっくり読んでくれると思うので。

2018.7.9



【以下は前のバージョンです】


「新旧レイク」で検索するとこのページが出てくるんですね。
責任を感じたので、新旧レイクに対する対抗策を示します。
私の考えでは、いくら信義則を主張しても勝てません。
資産譲渡契約の解釈も含め、細部を争うことが必要です。
    
新旧レイク主張に対抗するには次の点がポイントになります。
1.営業譲渡の存在
①店舗・従業員・システム・ATM等、貸金営業に必要とされる有機一体をなす財産が移転している。
②会社登記簿にも平成10年11月2日に営業を譲り受けたとの記載あり
③資産譲渡契約書中、譲渡対象資産としてGoodwillが含まれている。
2.営業譲渡契約があれば,特段の契約上の定めがないかぎり,営業に属する一切の財産は,譲受人に移転すべきものと推定すべき(昭和44年12月11日付最高裁判決)
基本契約上の旧レイクの地位、ひいては過払金債務も移転の対象に含まれる。
3.上記推定あることを前提にしても、過払金債務が承継されないとする「特段の契約上の定め」があるか。
ア.債務の非承継条項(11.3条)
①翻訳は被告代理人が本訴訟のために行ったもので、当時存在したものではない。
②表題に「Liabilitiesの非承継」とあるが、「Liabilities」の一般的訳語は「責任」(BASIC英米法辞典)
③そもそも英米契約の場合、条文の解釈に争いがあるときは、本文の解釈によるべきであり、表題(heading)はその参考としうるに過ぎない。
④本文には「(a)(b)(c)の「Losses」を引き受けないとあるが、「loss」の訳語は「損失」であって「債務」ではない。
⑤被告自身,11.3条本文 (a)(b)(c)中にある「Losses」を「債務」ではなく,「損失」と訳している。
⑥同条には確かに,みなし弁済の法定要件を遵守しなかったことで新レイクに損失を生じた場合,旧レイクはその損失を補償すると規定されているが、それは「旧レイクが当該規定を遵守している」ことを表明保証したことの結果であり,「新レイクが旧レイクの債務を承継しない」ことの結果ではない。
∴同条項は「特段の契約上の定め」とは言えない。
イ.1.1条「Assumed Liabilities」の定義規定
同規定に過払金債務が入っていないのは、前期表明保証条項がある以上当然のこと。
ウ.1.1条の「本件譲渡対象資産」の定義規定
同規定はそもそも定義規定に過ぎない。
貸主としての地位が入っていないのは,当該地位が他の譲渡対象資産とは異なった扱いがなされて然るべきであり,「本件譲渡対象資産」とは別に規定されていたと解するのが自然である。
4.原告は乙5及び乙6に署名押印していたか
①乙5及び乙6はサンプルに過ぎず,実際に原告がこの書面に署名押印したとする証拠はない。
②原告が契約切替後、新レイクとの基本契約に切り替えている以上、被告に、原告をして乙5ないし乙6に署名させる必要がない。
5.新レイクは契約切替する以前の段階で、旧レイク時代の基本契約に基づき、旧レイク顧客に貸し付けを繰り返しているのは、契約上の地位の移転があったからとしか考えようがない。
6.新レイクは、資産譲渡契約後20年近く旧レイクの過払金を支払ってきた。
7.免責登記
 実際に債務が承継されていれば、
 免責登記でこの効果を否定することはできない。
(2017.3.17加筆)