遅すぎた? 最高裁判決

平成27年9月15日最高裁判決の解説はここをご参照ください。
http://d.hatena.ne.jp/yamada-home/20150915/1442309251

ところで、この判決が、現時点で、特定調停に及ぼす影響は極めて限られます。
この判決で問題になった特定調停は、平成14年6月に成立したものですが、「本件調停の調停条項に定めるほか,申立人と相手方との間には何らの債権債務のないことを相互に確認する」という条項が入っていました。しかし、このような過払金を失わせかねない清算条項がついていたのは、せいぜい平成15、6年ころまでです。その後は「本件調停の調停条項に定めるほか,申立人の相手方に対する債務のないことを相互に確認する」というふうに、貸金債務に限って不存在を確認する条項に替わっています。
そして、最近業者は、こうした特定調停後の過払金請求事案では、貸付停止による時効完成の主張を必ずしてきます。平成21年01月22日最高裁判決は「過払金は完済後10年で時効になる」としていますが、「完済するまでは、カードを使ってお金を借りようと思えばいつでも借りられたのだから、その間時効は進まない」ことがその理由となっています。少なくとも、特定調停の申立が行われた時点で、お客は新たな借入ができなくなっていますから、その時点で時効期間はスタートしています。ですから、平成27年9月という今の時点で、特定調停前の過払金は殆ど時効になって消えています。そして、最高裁判決は、特定調停後払った過払金は不当利得にならないとしていますから、その後の過払金は生じません。
すなわち「特定調停後に過払金請求できる案件」が今はもう存在しないのです。
ですから、この最高裁判決は遅すぎた判決といっても良いでしょう。

もっとも、私的和解について、この最高裁判決は大きな重みを持っています。従来、裁判所は、清算条項付きの和解書面があるというだけで、簡単に請求棄却判決を書いてきましたが、今後こうした紋切り型の対応は許されないと思われるからです。