中国 構造改革も財政政策も国有企業のみ

中国経済の減速の一番の原因は、投資の減少。今年1−8月期の固定資産投資額は、どの程度正確かは不明だが、前年同月比10.9%増で1−7月期より0.3%鈍化。中国不動産業大手4社の不動産投資在庫は1.8兆元(34兆円)にまで達していると言う。
これも正確かは不明だが、1−8月期の製造業投資は8.9%増とこれも0.3%低下。
日本からの工作機械・建機、工作機械の中国輸出額も急減しており、実態はこれ以上に悪化している可能性がある。
しかし、政府の景気対策はあくまで国有企業が中心。9月13日、1)優良資産だけ切り出しての部分上場を改め、全体上場を促進、2)董事会権限の強化、3)国の監督・管理を簡素化し、国有企業同士の再編を促進、4)転換社債等の導入といった国有企業改革を進める長期戦略を発表した。
1と3は中国企業の経営の透明性、党からの独立性を確保し、外資の呼び込みを目指すもの。そして3は、現在110社ある中央直轄の国有企業を統合し、2020年までに40社程度への集約を目指すのが目標だ。過剰設備や重複投資を減らし、世界で戦える巨大国有企業をつくるのが狙いだ。中国南車と中国北車を中国中車に統合したが、こうした動きを加速しようというものだ。
中国政府としては、産業の高度化を目指したいが、急には無理なので、手っとり早く重厚長大の国有企業の競争力を強化しようということだろう。
さらに言えば、中国が推し進めている一帯一路構想もまた、国有企業救済策だ。今までのように高層住宅外を作れば売れる時代は終わり、国内にフロンティアは消滅しつつある。だから国外にフロンティアを広げ、鉄とセメントを売りつけようという腹ではないか。よく考えればAIIBも同様の過剰生産設備対策なのかもしれない。いずれも対外政策ではなく、対内政策の疑いが濃い。中国のGDPに占める設備投資の割合は6割。企業統合を進め、遊休設備の廃棄を進めるだけでは、GDPが大幅に悪化してしまう。成長を維持するためには何としても生産力を維持しなければならない。こうした考えから、一帯一路もAIIBもひねり出されたのか知れない。
どちらにせよ、結局欧米企業が期待していたリコノミクスは最早死に体となり、国有企業中心の重厚長大産業延命策に比重が移っている。それは、国有企業の延命策であるとともに、習金平の延命策でもあるだろう。