国交省 標準約款を通じてエレベーター2012年問題を強行決着

 エレベーターの2012年問題が、国交省の主導で、エレベーター製造業者に有利な形で決着されようとしている。
 国交省住宅局建築指導課は、4月15日付で、「昇降機(エレベーターのこと)の適切な維持管理に関する指針」(案)を発表した。同指針案では、「エレベーター保守・点検業務標準契約書(案)」が定められているが、エレベーター製造業者の意見をそのまま取り入れる形で、エレベーターの保守期間が20年間に事実上定められようとしている。
 標準契約書案の第20条2項がまさにそれで、「フルメンテナンス契約の場合、自動更新の上限を本エレベーターの検査済証の交付日から起算して20年に達するまでとし、以降は、委託者及受託者の新たな合意により更新するものとする。」としているのだ。
 「以降は、委託者及受託者の新たな合意により更新」とあるが、要は20年経過すれば、エレベーター保守事業者は保守契約を一方的に打ち切ることができるということ。
 2012年問題を扱った新聞記事では、業界大手の三菱ビルテクノが「顧客側が部品切れ後も使用を続ける場合、保守契約を打ち切る」という方針と伝えられ、同社の「苦渋の決断だが、安全が第一。重要部品が入手できない状態で、無責任な契約はできない」との弁を伝えていたが、まさに業界の意見がそのまま反映された形だ。
 国交省は、標準約款の制定という、搦め手から、2012年問題を強引に決着させようとしていると言える。国交省が20年に策定したマンション長期修繕計画のガイドラインも、大規模修繕の目安を「30年」としており、長期修繕のタイムスケジュールからもずれることになる。今後中古マンションのストック化が図られなければならないのに逆行する動きではなかろうか。
 国交省は、5月15日まで反対意見を受け付けている。
http://www.mlit.go.jp/report/press/house05_hh_000401.html