人民元切り上げか

ガイトナーの電撃訪中

 ガイトナー米財務長官が8日、突然北京を訪問し、北京空港内で75分間、王岐山副首相と、人民元問題について会談した。王副首相は会談を終えると、すぐ米国にとんぼ帰りした。

人民元切り上げ、以外と早い可能性

 9日付の中国英字紙チャイナ・デーリーは「エコノミストらは政府が4〜6月期にも元を切り上げると予想している」とする記事を掲載。私の耳にも、中国のある企業が、政府から人民元切り上げがあり得るから準備するようにと告げられた、というような話が私にも聞こえてきているくらいだから、そう遠くない時期に切り上げがあるかもしれない。もっとも、それは2、3%といった程度のものであろう。
 4月22─23日にはG20財務相中央銀行総裁会合、5月下旬には米中戦略経済対話、6月下旬にはG20サミットもある。そうすると6月下旬には切り上げかとも思えるが、4月9日リード米上院民主党院内総務の報道官が、上院が中国人民元の上昇実現に向けた法案の採決を5月末までに行う可能性があると発表した。中国としては、米議会から言われて人民元を下げたとなると沽券にかかわるから、すると5月下旬の米中戦略経済対話で人民元切り上げを認めるかもしれない。或いはサプライズを演出するため、もっと早くなる可能性もある。

切り上げが中国に及ぼす影響

 中国人民銀行は05年7月21日、対ドル8.3元だった人民元レートを2%切り上げると発表。それまでの実質的な固定相場制から、変動相場制に移行したが、中国の変動相場制は、管理フロート制と呼ばれるもので、通貨の変動幅を固定されている。変動幅は中国人民銀行がか管理し、現行は0.5%となっている。為替レートは徐々に引き下げられたが、08年7月から1ドル 6.82元になったが、リーマンショックが起こり、以後、事実上同レートのまま固定されている。この0.5%という変動幅も変更されるのではという見方もされている。中国が人民元を対ドルレートで固定してきたのは、元高に進むと輸出に大きなダメージが出るからだ。今まで中国は元高を防ぐために、市場からドルを買ってきたが、その過程の中で大量の人民元が国内にばらまかれている。こうしたことも原因で、中国内に過剰流動性ともいえる状況が生じてきたが、この状況も変化する。中国人民銀行は8日の公開市場操作で、1年10カ月ぶりに3年物手形を発行、市場の余剰資金の吸い上げを図っている。こうした状況の一つ一つが重なって、中国経済も逆風を受けそうな状態だ。

3%の切り下げがすぐにも行われる可能性

みずほ証券アジア・エグゼクティブ・ディレクターの小原篤次氏はロイターのインタビューに対して「対ドルで3%程度の小幅な人民元切り上げは、早ければ15日午後にもありうるとみている。中国の輸出業者団体は、既に3%の切り上げを前提にストレス・テストを実施しており、中国大手通信機器メーカーは3%の切り上げの影響を即答できる体制にあることをみても、輸出業界では3%の切り上げでコンセンサスが形成されている。」と答えている。