カルザイというガン

カルザイ政権の腐敗

 岡田外相がアフガニスタンを訪問したり、オバマ大統領が訪日することもあって、アフガニスタン支援策が今日のテレビでも取り上げられていた。しかしアフガニスタンの一番の問題は、カルザイ政権が腐敗しきっていることだ。アフガニスタンは、各国政府の汚職度を示す「腐敗認識指数」ランキングで176位に甘んじている。アシュラフ・ガーニ前財務相(60)はニューズウィークのインタビューに対して、財務省の試算では、昨年の税収8億ドルの70%が、汚職と無駄遣いで失われていると答えている。国際支援もかなりの部分が政府高官の懐に入っているに違いない。09年8月アフガニスタンの大統領選挙に向けて、カルザイは支持者、資金集めのため、232人に閣僚ポストを、949人に知事の職を、1000人に副大臣の地位を約束したと噂されている(http://newsweekjapan.jp/stories/world/2009/07/post-371.php)。
 不正があっても、取り締まるものはいない。カルザイの米国籍の実兄は、在米中アフガンレストランを経営していたが、アフガン帰国後に瞬く間にセメント工場、銀行、不動産、トヨタ車ディーラーなどに投資、商業会議所を支配し、外国からの投資を取り仕切っている、という。自分自身、私腹を肥やしている以上、他人に対して不正を指摘できないのは当然のことだ。
 国民はタリバン支配を望んではいないが、現政権のこうした腐敗があるからこそ、タリバンも支持を増やしている。

選挙でも組織的不正

 8月に行われたアフガニスタンの大統領選挙で、カルザイ大統領が過半数を得票したが、その直後から不正が指摘されていた。ニューヨーク・タイムズカルザイ陣営が架空の投票所を800か所設け、大統領への票を数万票もねつ造したなどと伝えている。国連管理下の不服審査委員会には2200件もの不正の申立があり、うち650件は選挙結果に影響を与えかねない深刻なものだということだ。委員会は、不正があったと疑われる一部の投票所について票の再集計を行なうよう選挙管理委員会に命じた。対象になるのは一人の候補者に得票の95%以上が集中している場合や、有権者名簿よりも投票した人の数が多い投票所などだった。
 10月12日、国連アフガニスタン支援団・エイデ特別代表は、アフガニスタンの首都・カブールを訪れ、「選挙で大規模な不正があった。不正は約30%で行われたと言われている」と述べ、大統領選挙で不正があったとの認識を示した。ただ「集計は混乱しているものの、不正な票を取り除くことはできる」とも述べた。その後、再集計が行われ、最終結果では同委員会が認定した不正票が除外されてカルザイ氏の得票は過半数を割り、2位につけているアブドラ元外相との決選投票になると予想されている。もっとも、カルザイが決選投票に同意しなければ、カルザイが政権を握ることになる。実際カルザイは、選挙の不正を否定し続けてきた。各国政府は、カルザイに決選投票を受け入れるように説得しているが、カルザイが説得に応じるかどうかは分からない。

歴史は繰り返す

 米国の傀儡政権は、いずれも私腹を肥やし、民心を失い、最後は反対勢力に駆逐された。中国の蒋介石キューバのバチスタ、ベトナムのグエン・バン・チュー、いずれもそうだった。カルザイを大統領として支持する米国はカルザイと同類と見られている。結局、カルザイ及びそのシンパと、米国とが、手を結んでアフガニスタンを食い物にしているようにしか、アフガニスタン国民の目には映っていない。カルザイの腐敗政治が続く限り、西側の援助は砂に水をかけるだけの結果に終わるだろう。歴史にIFはないが、北部同盟の英雄マスードタリバンに暗殺されずに生きていれば、違った結果にもなっていたかもしれない(http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%9E%E3%82%B9%E3%83%BC%E3%83%89%E5%8F%B8%E4%BB%A4%E5%AE%98)。残念ながら、その点タリバンは賢かった。

追加

 10月20日選挙管理委員会は、不正票を除くカルザイ大統領の得票率は49.6%と発表。決選投票を11月7日に行うことも決まった。カルザイ大統領はこれを受け入れると表明。カルザイが受け入れを拒否するという最悪の結末は免れることはできた。(09.10.21)

追加

 1月28日ロンドンでのアフガニスタン支援会議が、治安権限の移譲を年内に始め、5年以内にはこれを完了するなどとした声明をまとめて閉幕したが、駐留外国軍の撤退には触れなかった。
 今回の会議はアフガン政府経由の援助を増やすことで一致したが、同国政府の汚職撲滅を条件にした。元タリバン兵の社会復帰などを支援するための信託基金汚職撲滅なしには機能しないとの見方もある。(09.1.30)