あのオバマが帰ってきた

上下両院合同会議でスタンディングオベイション

 ロックスターが帰ってきた。彼のボーカルに観衆は総立ち。場所はワシントンDC、上下両院合同会議、帰ってきたスターはバラク・オバマだ。
 オバマは、選挙運動中、その巧みな演説で人々の人気を勝ち取ってきた。マケイン陣営は言った。「私達は大変だ。ロックスターを相手にして戦っているんだから。」と。ところがオバマの大統領就任演説は、全くの期待はずれだった。コンサート会場に来たら、牧師が壇上で日曜学校をやっていたという感じだ。
 しかし米時間24日夜行われた、オバマの施政方針演説は、まさにロックそのもの、心地よい歌が心を高ぶらせる。日本ではNHKが午前11時から中継していた。僕はちょうど今日は遅番なので見ることができた。最近オバマの演説がCDになっているらしいが、今回の施政方針演説のCDが出たら、就任演説のCDは即お蔵入りになる。

スタートからトップギア

 オバマ演説の中身をちょっとのぞいてみよう。まずは出だしの部分からだ。(以下はasahi.comからの引用)
 我々の経済が危機的状況にあるというさらなる証左はもはや聞く必要はない。なぜなら毎日、実際にその危機の中を生きているからだ。朝起きたとき真っ先に頭に浮かぶ懸案であり、眠れぬ夜の原因なのだ。引退まで勤めるはずだったのにクビになった仕事。夢を築いてきたのに、今やわずかな細い糸でつながっている事業。あなたの子どもが(学費が工面できないため)そっと封筒に戻さなければならなかった大学の入学許可通知。この景気後退の打撃は深刻で、あらゆる所に波及している。
 我々の経済は弱まり、自信も揺らいでいるかも知れない。困難で不確かな時代でもある。しかし、すべての国民に分かってもらいたいことがある。それは、「我々は再建し、立ち直る。米国はもっと強くなって危機から抜け出す」ということだ。(略)
 自分に正直になってみれば、我々は、政府としても、国民としても、あまりに長い間、これらの責任を果たしてこなかったことを認めるしかない。こんなことを言うのは、誰かのせいにするためでも、過去を振り返るためでもない。どうしてこうなったかを理解することでしか、この苦境から脱する方法はないからだ。
 実際、我々の経済は一夜にして下降に入ったわけではない。住宅市場が崩壊し、株式市場が暴落したときにすべての問題が始まったわけでもない。もう何十年も、我々の生存は新しいエネルギー源を見つけることにかかっていると知りながら、我々は今日、これまで以上の石油を輸入している。医療費が毎年、我々の貯蓄をより大きく侵食しているとわかっていながら、改革を先送りしている。子どもたちは世界市場で仕事を求めて競っていかなければならないのに、あまりに多くの学校がその準備をさせていない。こうした問題が一つも解決されないのに、我々は個人として、また政府を通じて、過去にない規模で支出を続け、負債の山を築いてきた。
 言い換えれば、我々はこれまで、目先の利益がしばしば長期的な繁栄より重んじられ、次の支払日、次の四半期、次の選挙の先を見ない時代に生きてきた。黒字は未来に対する投資の機会ではなく、富める者への富の移転の口実になってしまった。手軽に利潤を得るために規制は骨抜きにされ、健全な市場は犠牲になった。人々は返す余裕がないのを知りながら、不良貸し出しであっても売り込んでくる銀行や貸金業者から金を借りて家を買った。この間、必要な議論や困難な決断は常に先送りされてきた。
 つけを清算する日が来た。我々の未来に対する責任を取る時だ。

金融について熱く歌う

 金融の流れは経済の血液だ。お金を借りられるということは、住宅や自動車から大学教育に至るまで、あらゆるものの購入資金を賄うということだ。商店がどうやって棚に商品を置くか、農場がどうやって器具を買うか、企業がどうやって給料を払うか、ということだ。
 しかし、金融はその流れを止めてしまった。不動産危機から生まれたあまりに多くの不良債権が、あまりに多くの銀行の財務にのしかかっている。こんなに多くの債務を抱え、ここまで信頼感がなくなれば、銀行は怖くて、家計にも企業にも、そしてお互いにも、もうお金を貸せない。貸し出しがなければ、家庭は住宅や自動車を買う余裕がない。企業は従業員の解雇を迫られる。我々の経済はさらに苦しみ、金融はもっともっと干上がってしまう。だからこそ、この政権は素早く、そして積極的に動き、この破壊的な悪循環を止め、信頼を立て直し、貸し出しを再開させようとしている。
 そうしたことをいくかのやり方で進める。まず第一に、我々は新しい貸し出し基金をつくる。(略)第二に、我々は住宅計画を立ち上げる。(略)第三に、我々は、米国民が頼りにしている主要な銀行が、さらに厳しい時期を迎えたとしても十分な信頼があり、十分な貸出資金があることを保証するため、連邦政府の総力をあげて行動する。(略)
 私は、受け取る支援に対する完全な説明責任を銀行に果たさせるつもりだ。銀行はいまや、(使われる)税金が米国の納税者への貸し出し増加にいかにつながるかをはっきりと示すことが求められる。最高経営責任者(CEO)たちはもう、自分たちの報酬を増やしたり、高価なカーテンを買ったり、自家用ジェット機で姿を消したりすることに税金を使うことはできない。そんな時代は終わった。
 たしかに、この計画は連邦政府の膨大な予算を必要とする。それは、我々がすでに確保しているよりも、おそらく多い。しかし、行動には大きなコストがかかるにしても、行動しない場合のコストのほうがずっと大きいことを私は保証する。行動しなければ経済の停滞は数カ月ではなく、数年、おそらく十年に及ぶことになるからだ。それは、財政赤字や企業活動にとってより悪いことであり、あなたたち、さらに次の世代にとってより悪いことになる。私はそんなことが起きることを拒否する。
 前政権が経営不振の銀行への支援を議会にはかったとき、民主党共和党とも一様に、経営の失敗とそれに伴う結果に憤慨したことは承知している。米国の納税者たちもそうだった。私もそうだ。だから、今銀行を助けるように見られることが、どれほど不人気であるかも承知している。(略)我々の仕事は、問題を解決することだ。我々の仕事は、責任の感覚を持って統治することだ。私はウォール街の重役たちの利益のために、1セントたりとも支出するつもりはない。ただ、私は、従業員の給与を支払えない小企業や、貯蓄しても住宅ローンを組めない家族を助けるためには、あらゆることをするつもりだ。
 これが目指すところなのだ。銀行を助けるのではなく、人々を助けるのだ。借り入れが再びできるようになれば、若い家族が新しい住宅を購入できるようになる。こうした住宅を建てる会社が人を雇う。そして雇われた労働者たちが消費に回す金を手にし、もし彼らが借り入れをできるようになれば、おそらく彼らは車を買ったり、新たな商売を始めたりするようになるだろう。投資家は市場に戻り、退職者たちが再び、安心して暮らせるようになるだろう。ゆっくりと、しかし確実に、信頼が戻り、我々の経済も回復するだろう。
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