GM 08年赤字3兆円 チャプターイレブンか

去年に続く大赤字

 GMが2月26日発表した08年決算は、純損失が308億6千万ドル(約3兆円)。07年も、387億3200万ドルという大赤字だったが、GMの赤字は4年連続だ。同時発表の08年10〜12月期決算も、売上高が前年比34%減となっている。
 GMは昨年末、米政府から134億ドル(約1兆3千億円)の融資枠を受けたが、今月既に使い切っているが、3月中に20億ドル(約1960億円)、4月中に26億ドル(約2540億円)が必要という。書いているだけで空しくなる。

待ったなしのリストラ

 政府融資は無条件ではない。3月末までにリストラ計画を出すという条件付。それができなければ、一括返済を求められ、GMは即破綻となる。
 ビッグ3支援を認めた法律は、ブッシュ政権下で作られたものだが、政府により専門官が選任され、この専門官は、長期的なリストラ計画を監督することになっている。この専門官の権限は絶大で、自動車メーカーが誠実な姿勢で臨まない場合は融資を取り消し、自動車メーカーと労組がリストラ計画で合意できない場合連邦破産法11条の適用申請の可能性も含めたリストラ計画を勧告する義務を負う。ブッシュはこの専門官を評して「ツアーリ(ロシア語でいう皇帝)」と呼んでいるほどである。
 3月末日の期限について、30日の延長が認められるが、その後、計画が提出されなければ、救済法に基づき大統領が融資の返済を求めることになる。
http://d.hatena.ne.jp/yamada-home/20081213/1229139813

医療保険問題解決がカギ

 前のブログにも書いたが、GMの最大の課題は、医療保険の負担問題だ。GMは、07年10月、全米自動車労組と和解。350億ドル渡すから、あとは組合のほうで医療保険を独立してやってくれということになった。現在政府から求められているのは、退職者向け医療保険の負担200億ドル(約1兆9600億円)を半減し、半分を株式でおさめる旨提案している。拠出金の半分がGM株というのは、紙切れを渡されるに等しいし、UAWが株主的立場に立つことは、労働組合としての立場とも矛盾が生じてくる。労働者の権利を主張すれば株価が下がり、株価が下がれば保険財政が苦しくなるからだ。
 しかし政府支援が引き上げられれば、GMの破たんは確実。苦渋の選択を迫られている。

債権者との協議も大詰め

 無担保債務を3月末までに3分の1に圧縮すべく、政権者に債権を一部株式に転換するよう交渉している。これは、デットエクイティスワップ(Debt Equity Swap)というもので、企業の再建手法として行われる。実際のお金は一切動いていないが、会社としては返済義務のある借金が減り、返済の必要のない資本が増えることになる。バランスシート上、自己資本比率が改善する。
 私の事務所は債務整理が専門だが、福岡県の「しんわ」という消費者金融がメインバンクとこのDESを行っている。負債の一部を株式と交換。その代り3年間は残りの借入金の支払いを元利とも猶予。3年経って返済能力が回復しなければ、一括返済を求めるというものらしい(と、しんわの役員は話していた)。

さてオバマ

 オバマは、GMをそのまま生かしておこうとは考えていないだろう。民間の資本も導入し、電気自動車等、先進技術を利用するハイテク企業としての新生GMを考えているのではないか。先日の上下両院施政方針演説を見て、そう思った。
 そのために、米連邦破産法11条(チャプターイレブン)が利用されるだろう。
※ ビッグ3についての、オバマの施政方針演説について
  http://d.hatena.ne.jp/yamada-home/20090225/1235577867