世界経済はどこも地雷だらけ

1月31日付日経によると,29日までに発表になった上場企業決算から見てとれるのは,10〜12月期の収益の急減速だという。
同四半期の経常利益は前年同期に比べて5%減。7−9月期は14%増からすると急減速。原因は新興国経済の不振だ。
状況は米国も同じ。同じく29日発表の米国の10〜12月期のGDP速報値は,前年比年率換算で0.7%増にとどまり,前期の2.0%増から急減速。民間設備投資は1.8%減,個人消費は2.2%増だが前期の3.0%増からすると,これも減速。原因は新興国経済の不振と原油価格の低迷だ。
昨年12月,イエレン議長は「海外リスクが減退した」と発言していたが,危ぶむ声も強い。エネルギー関連融資の不良債権化は今後本格化する。
去年の元切り下げ,今回の上海株の暴落で分かったのは,中国指導部が思ったほど優秀ではないことだ。中国経済の減速はここ数年顕著だったが,それでもフトランディングするとみられていたのは,優秀な中国の指導者層ならば,うまく乗り切るだろうとの信頼があってのこと。その前提が崩れだしている。ソロスは中国経済がハードランディングするとまで言いだした。
欧州も先行きは暗い。イタリアの不良債権化率がこの4年間で10%から18%に急上昇している(GDPの2割)。不良債権証券化し,政府保証をつけ,債権処理を進めることでEUと合意できたというが(29日付日経),証券化されるのは不良債権の中でも,回収可能性が高いものに限られ。効果は限定的とも言われている。イタリアの公的債務はGDP対比で130%であり,そちらも重しとなっている。

ただ,28日,非OPECのロシアのエネルギー相が,2月中にもOPECが非加盟国との会合を開催すれば,ロシアも参加すると発言。原油価格の上昇の期待から,同日原油先物が上昇。08年12月のOPEC臨時総会では,減産で合意。北海ブレンド原油が半年間で30ドル台から70ドル台に急騰した。原油価格が高騰するのは原油輸入国の日本にとってはつらい話だが,原油価格の急落が,新興国経済の不振を招いており,安すぎる原油価格は世界経済にとっては不安定要素となっている。しかし,サウジとイランの確執もあり,実現にはかなりのハードルがありそうだ。