東京都 老人ホーム運営指針大改定

川崎市内の有料老人ホームで入居者が相次いで死亡した問題を受け,東京都は,病気が原因であることが明らかな場合を除き,入居者が死亡した場合は報告するよう,東京都有料老人ホーム設置運営指導指針を改正しました。溺水,誤食・誤飲,認知症による所在不明,自殺未遂,虐待があった場合も報告を求め,入居者の家族への速やかな連絡盛り込んでいます。
旧指針では,報告すべき要件が「死亡など重大事故が発生した場合」と抽象的であったため,具体的なものに改めています。
以上は12月26日付日経の記事の引用ですが,改訂点は,上記にとどまらず,契約の際の入居者への情報開示,拘束0への配慮等,多岐にわたっており,大改訂と言っていいでしょう。老人ホーム施設運営者は,新指針を早い段階で,把握,理解し,現場の運営に落し込んでいかないと大変です。
http://www.fukushihoken.metro.tokyo.jp/kourei/shisetu/yuuryou/shishin.files/shinkyutaishou271222.pdf

ところで,こうした事故対策については,病院での安全管理が参考になるでしょう。都立病院では、医療の全過程において発生したどんな些細な出来事でも、気付いたことはレポートとして報告し、その分析を通じて、医療事故の発生を未然に防止することを目的とするインシデント・アクシデント・レポートの集計を平成12年8月から実施しています。 同報告では「インシデント」を,日常診療の場で「ヒヤリ」「ハッ」としたが、実施させる前に気づいたもの、何ら影響がなく患者に変化がないもの、何らかの影響を与えた可能性があり、観察の強化や検査の必要性が生じたものと定義付けており,「アクシデント」については,患者に何らかの変化が生じ、治療・処置を要したもの、集中治療や生命維持のための措置を要したもの、事故が死亡に関連した疑いのあるものと定義づけています。
私が個人的に気になるのは薬剤の問題です。私の母が入っている老人ホームでも,薬剤の取り違えなども時々起きます。施設では,数回分飲んでしまわないように,毎食後1回分だけを渡すようにしていますが,その過程で取り違えが起きてしまっているようです。本来ダブルチェックしているが,人員が急に他に取られ,急遽1人で対処せざるを得なかった結果,取り違えが発生したということもあるようです。さらに怖いのは,薬剤をシートから切り離し,小分けしてしまうため,認知症のある高齢者が包装ごと飲みこんでしまうことです。こうした事故が起こっても,高齢者はのどが痛いのがこうした包装の誤飲だと気付かず,レントゲンでもプラスチックは影を生じないため,医師もなかなか発見できません。仮に分かっても手術で摘出するしかなく,そうした負担が高齢者の生命にも悪影響を生じます。であれば,薬剤を一つずつ取り出し,そのまま飲めるようにすればいいかというと,手間がかかるのと,職員側でもダブルチェックができなくなり,高齢者自身,間違った薬を処方されても気がつかないという欠点があり,難しい問題です。