中国発の世界同時株安

世界同時株安が進んでいます。複数の要因が指摘されていますが、最大の原因は中国経済の先行き不安でしょう。
これまで、中国のバブル崩壊が騒がれながら、アナリスト、エコノミストが最終的には緩やかな成長鈍化に落ち着くだろうと予想してきたのは、中国的資本主義に対する盲目的な信頼でしょう。
民主国家である欧米諸国が、法規制や、既得権勢力間の調整で、構造改革も進まず、民衆のご機嫌取りでばらまきが行われるのに対し、中国は優秀な官僚が合理的精神から、中国経済をうまくコントロールするだろう、と思ってきたからです。
これは世界の保守化ともリンクしているでしょう。衆愚政治を嫌うエスタブリッシュメントが、哲人政治という美名の下の独裁政治を密かに希求する心情の表れともいえます。
ただ、中国は、共産党の、共産党による、共産党のための国家であり、国民の幸福を言うときも、国民に働いてもらって富を蓄積しようという下心の表れでしかありません。朱鎔基が行ったのは、国有企業のうち大きな企業はリストラし収益性を高め、集中的に育成強化することにより、支配層への富の蓄積および拡大を図り、中小企業は民間に開放し、あとはお前たちで勝手にやれと放り出しました。そして国有企業が儲かれば、その富はその周辺にも広がり、結果的には国が豊かになるのだから、国民も納得してついてくるだろうといった発想です。
国進民退という現象はそこから発しています。レアメタル騒動でもまさにこうした共産党独り勝ち体質が出ていました。当時、レアメタル人民解放軍系企業がウィグル地区に持つ鉱山と、中国南部山間部の零細企業が持つ鉱山とが生産しました。時の胡錦涛政府が行ったのは、南部の零細レアメタル鉱山を環境保護の美名の下につぶし、生産を人民解放軍系企業が支配する北部のレアメタル鉱山に生産を集中させることでした。そうすれば政府の言いなりに輸出規制も行うことができ、価格統制もでき、対外輸出をコントロールすることでレアメタルを原材料とする工業施設を中国に作らせ、そういった先進材料技術もわがものにしようとしたのです。そうした国策の下、南部の零細鉱山は廃業させられました。
こうした共産党独り勝ち政策が、今後も成功を収めていくとは到底思えません。中国は、今一路一帯構想とブランド化政策を推進していますが、一路一帯構想はこれまでの開発独裁の延長ですからうまくいくでしょうが、ブランド化政策が今の体制でうまくいくとは思えません。
中国のGDPは投資部門が主力を担ってきましたが、これを民需に重心を移していくとした場合、民間の経済活力を引き出す必要がありますが、現在の中国の経済体制はそれに沿うものになっていません。