木造建物の耐震性は疑問符だらけ

日本木造住宅耐震補強事業者共同組合(木耐協)が、平成18年4月から平成26年10月までに実施した耐震診断の分析結果をまとめたところによると、1950年から2000年10月までに着工された木造在来工法2階建て以下の建物の、震度6強程度の地震に対する耐震性評価は、次のとおり散々な結果でした。
建物全体
 倒壊する可能性が高い 74.99%
 倒壊する可能性がある 11.23%
新耐震基準建物
 倒壊する可能性が高い 63.06%
 倒壊する可能性がある 22.10%
木造建物も一応建築確認申請の際に、平面図上に耐震壁の配置を書くことになっています。確かに、建物内の耐震癖が、X方向に何個、Y方向に何個と書きこむのだが、耐震壁の数さえ合っていれば、申請は通ってしまいます。つまり、耐震壁の配置は、ノーチェックということです。しかし、建物の配置は偏心率(重心と剛心のずれ)に影響し、耐震癖が建物の片側に寄っていると、ねじれに弱くなってしまいます。木造建物の場合は申請は2級建築士、すなわち普通の大工さんでも可能です。もっとも1級建築士ですら、意匠を専門とする人が大半で、構造の専門家は少ないのですが。
さらには建物完了時の完了検査を受けている建物が少数である点も問題です。建築基準法は建物完了時に建築主事ないし建築確認検査機関に指定されている民間業者による完了検査を受けなければならないことになっていますが、これがざる法のため、阪神淡路大震災時には3割の建物しか完了検査を受けていませんでした。現在は、完了検査が無いと融資が得られない、増築が認められないという環境変化もあり検査率は7割ほどになっているようですが、古い建物だと完了検査を受けていない方が多いのです。
さらに、上記数値を見ると、完了検査が果たして厳密に行われているかさえ疑問に思います。どの建築確認検査機関を使うかは、建築会社の選択であり、検査が甘い方が仕事をとりやすいことは疑いのない事実でしょう。
要するに、耐震性の高い建物にしたいと思うなら、業者やお役所を信用してはならず、自己防衛が不可欠だということです。建築業者、不動産業者の持ってきた図面を、構造の分かる専門家にチェックしてもらうこと、基礎工事段階で設計図通りに建築されているか、専門家に見てもらうことが必要(コンクリート造の建物の場合と違って、木造は設計変更が容易なため、すみ柱の位置が設計図と違うなんてことも平気であります。)です。