インラック 首相失職

タイのインラック首相が政府高官人事で職権を乱用したとされる裁判で、憲法裁判所は7日、インラック首相の行為は憲法違反とする判決を下した。違憲判決が下ったことで、憲法の規定により首相は失職する。
人事決定にかかわった9閣僚も違憲と判定され、失職することになる。今後は選挙管理内閣が7月20日実施予定のやり直し選挙を行うことになる。
問題となったのは、2011年の国家安全保障会議(NSC)事務局長の人事。判事は、首相が職権を乱用し、NSC事務局長だったタウィン氏を別のポストに異動させ、後任に首相の縁者が就くようにしたと指摘。「国のためになるとして実施された人事でない」と述べた。首相は、情実人事はしていないと主張していた。
タイでは、北部の低所得農民層と、南部の高所得都市住民層とが対立。タクシンは、医療の無料化等、貧困農民層向けの政策を取り、選挙に勝利し、01年首相になった。これに対し、南部都市住民、エリート、軍部に支持基盤を持つ反タクシン派は、「ばらまきだ」とタクシンに反発。タクシンは脱税を攻撃され、06年、軍のクーデターで首相の座から引きずり落とされ、亡命した。次の選挙でも、タクシン派が選挙に勝ったが、憲法裁判所が選挙法違反を理由に議会を解散。タクシン派は次の選挙でも勝ち、タクシンの妹のインラックが首相についたが、インラックも憲法裁判所の判決で首相の座を追われることになった。
タクシン派は選挙でも勝っても、勝っても、エリート層が軍や司法を使って、政権を覆してきた。今回も同様ということになると、どうなるか。本来なら、再度選挙ということになるが、タクシン派は選挙を信用せず、例の赤シャツ黄シャツの騒乱状態に突入することもありうる。そうなった場合、軍が動くかどうかが勝負の分かれ目になる。