中越 海上でにらみ合い

5月2日中国が南シナ海西沙諸島周辺に石油掘削設備搬入を始めた。同海域はベトナムの排他的経済的水域(EEZ)に当たるため、ベトナムは現場海域に2隻を派遣したが、中国側が撤退に応じないため、巡視船などを増派した。
中国海事局が3日、同海域で石油の掘削作業を始めるとベトナム側に伝え、国有大手石油企業が中国海警局の監視船の護衛の下、掘削を開始。ベトナム武装した警備艇など約30隻を現場海域に派遣。中国の監視船はベトナム警備艇に体当たりしたり、高圧放水銃を発射する等威嚇的な行動を行っている。7日にはベトナム警備艇乗員が負傷、警備艇にも被害がでた。
ベトナムの沿岸警備当局者は7日、「忍耐には限りがある。中国側がこうした行動を取り続けるなら、自衛的手段を取らざるを得なくなる」と警告。中国外務省は同日「中国企業が中国領海内で実施する活動を妨害しないよう求める」とベトナム側を批判した。
国務省もサキ報道官が7日の声明で「今回の一方的な行動は、平和と安定を損なう形で係争海域をめぐる主張を押し通そうとする中国の、より広範な行動様式の一部のように映る」と改めて非難した。
これに対し、中国外務省国境海洋事務局の易先良副局長は8日、北京で緊急記者会見し「ベトナム船が故意に中国公船にぶつかってきた。驚いている。」と、ぶつかって来たのはベトナムだと主張している。
両国が領有権を争う西沙諸島付近では、ベトナム漁船と中国船をめぐるトラブルが頻発。ベトナムは、南シナ海問題の平和的解決をうたった「行動宣言」を尊重するよう中国側に求めてきた。
中国は、正式な国家設立前の1958年9月に『中華人民共和国政府の領海に関する声明』を出し、東沙諸島西沙諸島中沙諸島南沙諸島の領有を主張している。そして、9段線といって、南シナ海を南下し、えぐるような形で排他的経済水域を主張している。
南沙諸島海域では、1980年代に入るとともに中国が海洋調査を実施。続いて中国海軍艦隊が軍事演習を繰り返すようになり、1988年には海軍艦隊が護衛するなか陸戦隊がベトナム南部海域にある6つのサンゴ礁に上陸して中華人民共和国の主権標識を建てて実効支配に乗り出した。当初は、漁民の避難施設という名目の簡易な建物が建造されただけであったが、数年内には鉄筋コンクリート製の恒久的軍事施設が建設されるに至った。1990年代初頭にはフィリピン西方海域の海洋調査に着手し、数か所のサンゴ礁に主権標識を建て、1994年にはフィリピンが領有権を主張しているミスチーフ礁に漁民の避難施設を名目とする建物を構築。1998年から1999年にかけて鉄筋コンクリート製の恒久的軍事施設へと改修した。
2002年11月の中国ASEAN外相会議において、係争の平和的解決などを盛り込んだ「南シナ海行動宣言」を採択されたが、この時期既に中国は南シナ海の実効支配を固めていたのである。当初中国は、周辺諸国南シナ海の共同開発に取り組んでいたが、2010年9月11日、中国当局ベトナム漁船を拿捕。2011年には、中国の艦船がベトナム探査船のケーブルを切断するなど、態度を強行化させてきた。
南シナ海行動宣言」は、あくまで宣言であって法的拘束力を持つものではない。そのため、行動宣言には、法的拘束力のある行動規範の合意に向けて努力することが規定されている。ASEANは行動規範の合意を中国に働きかけるが、中国がこれを先延ばしにするという構図が今まで続いてきた。
オバマが中国を囲い込むべく、4月末、日本、韓国、マレーシア、フィリピンを歴訪したが、中国は米国の弱腰を見透かすように、行動を激化させている。