取り調べの可視化 試案固まる

改正案

 捜査と公判の改革を議論する法制審議会(法相の諮問機関)の「新時代の刑事司法制度特別部会」が30日開かれ、法務省が法改正のたたき台となる試案を示した。
 試案では、裁判員裁判に限り(A案)、または、全事件につき(B案)取り調べ全過程の録音・録画を義務付けるが、その上で以下を例外とした。

  1. 機材の故障
  2. 被疑者が記録を拒んだことその他の被疑者の言動により、記録をしたならば被疑者が十分な供述をすることができないと認めるとき。
  3. 犯罪の性質、関係者の言動、被疑者がその構成員である団体の性格その他の事情から、被疑者・その親族の身体若しくは財産への加被疑者の言動から十分な供述を得られないと判断したとき
  4. 当該事件が指定暴力団の構成員による犯罪に係るものであると認めるとき

 他方、通信傍受の対象事件は大幅に拡大され、殺人や放火なども追加。義務付けと例外、実効性の担保の関係は、対象事件は例外にあたるものを除き全過程の録音・録画が義務づけられ、録音・録画義務があるものに
ついて不利益供述を刑訴法322条で証拠請求し、任意性を争われた場合は、読み聞け・署名押印を含む取調べ時の記録媒体を請求しない場合には請求は却下される、という構造となっている。
日弁連ニュース2014.5.2
 法務省は夏までに議論を取りまとめて来年の通常国会に関連法案を提出したい考えだ。
http://sankei.jp.msn.com/affairs/news/140430/trl14043021280009-n1.htm

諸外国での扱い

 ほかの国で見てみると、イギリスは全事件を、フランスは少年事件と重罪事件に限り、取調の全過程を録音録画することとなっている。ドイツは録音・録画しないが、これは調書より、裁判での供述が重視されるから、日本のように叩いて、はたいて自白させて調書をとっても無意味だからである。

韓国では

 隣の韓国でも、録音録画は捜査機関の裁量である。しかし、ここにも韓国の刑事司法制度の特色が影響している。韓国では、警察の調書は全く証拠として信用されていない。だから警察が頑張って自白させて調書をとってもあまり意味がないので、警察段階では録音・録画も意味がないのである。したがって、録音・録画化は検事の取り調べで行われている。
 以前は、検事調書に本人が署名・押印をしていれば、それだけで証拠能力が肯定されていたが、2004年12月、大法院が判例を変更し、供述人の供述内容と供述調書の内容が同一であることが立証されなければ証拠能力は認められないこととなった。そこで,検察は,検事調書の証拠能力を確保する必要から,取調べの録音・録画をより一層推進することとした。韓国では録音・録画するときは、取調の最初から最後までする必要がある。最初は自白を渋っていたが、そのうち警察の主張に沿うような供述を始めたから、そこから録り始めるというのは許されない。

日本は人権後進国

 日本人は、自分たちは人権で先進国と思っているかもしれないが、思い違いもはなはだしい。難民指定に関しては、最低レベルと言うに等しく、法務省の入管は、役所の中で最も人権を軽視している分役所だろう(人権擁護の管轄は法務省というのが、悪い冗談としか言えない)。刑事司法は、とくに代用監獄、自白偏重、死刑存続と、先進国どころか、中進国でも、下位レベルといったところだ。