日本の電池産業 エネルギー貯蔵システムでも「いつか来た道」

現在二次電池市場の中心は、スマホ等に搭載される小型電池であるが、複数の市場調査会社は「20年ごろには自動車用バッテリーとESS(エネルギー貯蔵システム)用バッテリーが小型二次電池市場を超える」と展望している。
小型二次電池は、日本企業は韓国企業に完敗。いくら投資しようかと迷い、役員会で議論を重ねているうちに、韓国企業はオーナー社長の即決即断で大型投資で市場を制覇した。
今後は、車載電池、ESSに戦場が移ると予想されるが、ここでも日本企業の立ち遅れが目立っている。LG化学が二次電池に参入したのは05年と遅かったが、電気自動車用のバッテリー市場に集中してきた。同社は、現代・起亜自動車、GM、フォードのほか、長安汽車集団、ボルボルノーなどと供給契約を締結している。韓国の電池製造の2強は、サムソンSDI、LG化学だが、さらにSKイノベーションという化学会社も二次電池を作っており、同社はダイムラーに電池を供給する独コンティネンタル社と、車載リチウムイオン電池の開発・生産を目的とした合弁企業を設立した。新会社は、SKが51%出資し、主導権を握る。日本の電池企業は、国内自動車会社との関係から、海外に打ってでることができず、海外市場は韓国企業に制覇された。
日本企業は、さらにESSでも韓国企業の後塵を浴びようとしている。太陽光、風力などの新型エネルギーは発電量に波があるため、電力網の中で蓄電システムを組み込み、エネルギーの安定供給を実現する必要があるが、ESSはそのための装置だ。ESSはスマート・グリッドの中核の一つをなしている。現在ESSの主戦場はカリフォルニア州だが、進出しているのは、サムソン、LG化学といった韓国企業。日本も、ようやく、そろそろESSにも取り組もうと、2周、3周遅れでカルフォルニアで商談を進めるようになったが、相手からは今他社(もちろんサムソン、LGのこと)と商談中と言われ、門前払いを食らわされている。日本企業は、またしても性懲りなく、かつて来た道を繰り返している。
経産省も感度が低すぎる。エネルギービジネス戦略研究会などと大層な名前の研究会を立ち上げ、13年6月27日には中間案をとりまとめたが、ESSについては次の記載があるだけだ。
「IEAが2012年から作成に着手したエネルギー貯蔵システムの技術ロードマップにおいて、産業等の大規模需要家及び最終需要家向けのエネルギー貯蔵システムとして、NAS電池、レドックスフロー電池リチウムイオン電池ニッケル水素電池等が位置づけられるなど、次第に注目を集めつつある。」