米国非農業部門雇用者増は低水準、でも失業率は6.7%に下がる

国労働省が10日発表した12月の雇用統計は、非農業部門雇用者数が前月比7万4000人増と、市場予想の19万6000人増を大きく下回り、2011年1月以来約3年ぶりの小幅な伸びにとどまった。12月の失業率は6.7%に改善した
FRBは12月18日のFOMCで、QE3の縮小を決定。2014年1月から、現行の月850億ドルという国債住宅ローン担保証券の購入額を、ひとまず100億ドル減らすことになっている。そうなると次の関心事は、ゼロ金利政策をいつまで続けるのかという一点に絞られる。
FRBは12年12月12日のFOMCで、失業率が6.5%程度に落ち着くまで事実上のゼロ金利政策を続けることを決めた。それまでは15年なかころまでと言っていたのを、目標を時期ではなく失業率に切り替えたのだった。もっとも、バーナンキは、失業率が6.5%を下回るのは15年半ばごろと見込んでおり、解除の目標時期は実質的に変わっていないと強調した。米国の失業率は低下を続け、14年末にはゼロ金利政策を終えるのかという声も起こっていたが、13年9月18日バーナンキは「失業率が6.5%を大幅に下回るまでは実現しない可能性もある」と述べた。11月19日の全米エコノミストクラブの夕食会では、失業率が6.5%に低下した「かなり後」までも、政策金利はゼロ近辺で維持される可能性があるとした。
FRBは根拠法で雇用の最大化と物価の安定を義務付けられており、物価と失業率を基準に金融政策を決めるのは理解できる。ただ、当初は失業率が6.5%になったらと言っていたのに、今は6.5%になってもしばらくはゼロ金利を続けるとした。その理由は何か。12月の雇用統計がその答えを示しているのではないか。非農業部門雇用者数が前月比7万4千人増と極めて低い数字であったにもかかわらず、失業率は6.7%に改善しているのである。要は就職を諦める人が増え、失業率が増えたのではないかということだ。これに追い打ちをかける政治的決定が13年12月になされている。米議会の超党派委員会がまとめた財政合意では、緊急失業給付(EUC)への連邦予算措置が盛り込まれなかった。EUCは2008年の金融危機以降に打ち出された景気刺激策の一つで、結局13年末で失効してしまった。そうなれば、職探しを断念する長期失業者の数が増え、失業率はさらに下がることになる。
また、増えた新規雇用は、低所得労働に吸収されている。米国では製造業復活が盛んに言われているが、正規雇用が非正規雇用に置き換えられ、(中国と競争になるため)正規雇用も賃金が下がっている。
失業率アップ=雇用回復とは言えない米国の現実が、失業率6.5%という目標を意味のないものにしてしまったのである。