中国の経済指標ははりぼてか

 武者陵司がロイターのコラムで「中国経済復調という誤ったシグナル」という一文を書いている。
 この人の文章は歯切れが良い。「統制経済の中国の場合、需要に基づかない投資がより長期にわたり持続する可能性はあるが、永遠はあり得ない。いずれ限界に達したときは、成長率は5―7%割れどころでは済まない可能性が高い。消費は中国のGDPを4%程度押し上げているに過ぎず、投資の伸びが止まれば、一気に4%、もしくはそれ以下の水準まで落ちる可能性は十分あるのだ。場合によっては、中国経済の突然死、数十年にわたる長期停滞が起きても何ら不思議ではないということである。」と、まぁ、快刀乱麻である。エコノミストという肩書が付いている人でここまで言い切る人はいないのではないか。
その理由として上げるのが以下の点(表現はいじっています)

  1. 中国の投資が名目GDPに占める割合が45.7%(12年)と、韓国の26.7%、日本の21.2%、ドイツの17.6%、米国の15.8%に対して、けた外れに大きいこと。
  2. 労働分配率は異常なほど低く、富は国家と企業に集中していること。
  3. 国営企業が独占価格によって高い収益を得て、そこにいろいろな既得権益がぶら下がり、所得の再配分が進まないこと
  4. 都市戸籍農村戸籍とで、労働力が分断され、労働力のミスマッチが調整できないこと。
  5. 共産党政権がこういった構造的問題にメスを入れるとは思われないこと。

 こういった点は言い古されており、新味はないが、まさにその通りといったところ。だが「中国経済の失速が世界経済にとって凶かと言えば、それは違うと考える。中国の地盤沈下は、同国が独り占めしてきた世界の供給拠点を他の地域に譲るということだ。その地盤沈下によって、他のアジア諸国やメキシコなどにチャンスが広がるということだ。」とは、ちょっと楽観的すぎる。
 インドは、インフラが未整備の上、政府が極めて非効率かつ朝令暮改のため、海外からの投資も軟調だ。インドネシア、トルコ等は川上産業の蓄積がなく、輸出を増やせば、輸入がそれ以上に増えるため、経常収支が赤字化する。ブラジル、インドネシア、ロシアは資源が頼みで、資源を爆食する中国がいなければ、経済は低調化する。どの国も簡単に中国にとって代われるようには思えない。