婚外子差別規定を違憲とする大法廷判決 最高裁判決の影響についても重要な判断

 平成25年9月4日、両親が夫婦でない場合に生まれた子(婚外子)の法定相続分を夫婦間に生まれた子の2分の1とする民法900条4号は、法の下の平等を定めた憲法14条1項に反するとした大法廷決定がなされた。平成7年7月5日大法廷決定には同じ問題で、合憲との最高裁決定がなされているが、このときも5名の裁判官が反対意見を書いているが、今回は裁判官全員が違憲との判断であった。
 ところで、この最高裁判決は、もう一点画期的な判断を行っている。
 同判決は、本件事案で相続が開始した平成13年7月当時、すでに婚外子の相続分を差別することは憲法14条1項に反する状態にあったと言っていることである。とすると、平成13年7月以降になされた、民法900条4号を理由に、婚外子の相続分を半分とした裁判所の審判、遺産分割協議はさかのぼって無効になるのではないかという重大な疑問を生じるのだが、無効にはならないとしているのである。
 金築誠志裁判官は「遅くとも本件の相続開始当時には本件規定は憲法14条1項に違反するに至っていた旨の判断が最高裁判所においてされた以上,法の平等な適用という観点からは,それ以降の相続開始に係る他の事件を担当する裁判所は,同判断に従って本件規定を違憲と判断するのが相当であることになる。その意味において,本決定の違憲判断の効果は,遡及するのが原則である。」と補足意見で述べている。しかし、そうすると、社会に大混乱を生じることになる。そこで、最高裁判決は、金築裁判官も補足意見で主張するように法的安定を重んじて、この最高裁判断は、過去になされた審判、協議を無効とするものではないとした。これは、憲法上大きな議論を巻き起こすことになるだろう。
 なお、少なくとも平成13年7月以降の相続案件で、審判や協議がまだなされていない場合は、今回の最高裁決定を判例として、婚外子も相続分において平等に扱われることになる。
 一番難しいのは平成7年7月5日大法廷決定以降、平成13年7月までに生じた相続案件だ。これには裁判官はかなり頭を悩まされることになる。