トリウム原発とは

中電が運転停止中の浜岡原発構内に「原子力安全技術研究所」を、要員12人の体制で7月1日に発足する。廃炉の1、2号機を利用して機器劣化の進行具合や解体工事の安全な進め方の研究などを行う。また、同原発で観測される地震観測データを蓄積。予想される巨大地震の早期検知が独自にできるかを探り、原子炉の緊急停止時期の判断材料に利用する方法なども研究する。将来的には、トリウムを使った新型原子炉や使用済み核燃料の次世代型リサイクル技術の開発なども視野に入れている。
このトリウム原発川勝平太知事の肝いりによって研究対象となることが決定した。このトリウム原発とは何か。日経の特集記事によると次のようなものらしい。700度の高温の溶融金属にトリウムを混ぜ、これに中性子をぶつけるとトリウムはウラン233に変わる。このウラン233が分裂してエネルギーを生み出すというもの。世界に実験炉は50年前に米オークリッジ研究所が動かしただけで、以後は一度もなく、ほとんどゼロからのスタートに近い。トリウム原子炉を推進する人は次のメリットを挙げる。

  1. 沸騰水型原子炉は約70気圧、加圧水型原子炉なら150気圧もの内圧が圧力容器等にかかるが、トリウム炉は常圧である
  2. 必要最低限の燃料を入れ、消費した分だけ注ぎ足せばいい
  3. ウランに比べて産地が世界の一部に偏っていない
  4. メルトダウンが起きにくい
  5. プルトニウムが生成されず、他の長寿命の放射性物質を短寿命のものに転換できる。

しかし、次のような問題点も指摘されている。

  1. ポンプや配管が放射線を出す700度の液体にさらされ続けるが、こうした場合の劣化の大きさ等が不明
  2. ウラン233は透過性の強いガンマ線を出すので、取り扱いが危険

なお、長寿命の放射性物質をトリウムと一緒に燃やすと短寿命の放射性物質に転換するため、京大の山名元教授はトリウム炉を放射性廃棄物の処理に使うほうが現実的という意見を述べている。
日経朝刊2012.8.5 毎日新聞静岡県版2012.6.1.