債権債務無し和解の消契法10条違反

 最近アコムが過払金請求訴訟で「この顧客とは平成17年に和解をし、債権債務無しの清算条項も設けているので、既にその時点で過払金返還請求権を放棄している」と主張してくることが多くなった。
 アコムのやり方は結構えぐい。顧客が全く期限に遅れず払っているのに、電話してきて「店に来て書類にサインしてもらえれば、利息を無しにできるが、どうか。」と勧誘するのだ。お客が喜んで店舗を訪れ、被告従業員から勧められるままに、示談書というものに署名押印するのだが、アコムはその示談書の中に「今後両社の間には本示談書に定める以外に債権債務がないことを確認する」という、いわゆる清算条項を入れている。アコムはこれを盾に「過払金を放棄したじゃないか」と主張するのだが、顧客は過払状態になっていることなどつゆ知らず、今ある一カ月分の利息も、将来の利息も免除してくれるというので、得した気持ちになっており、自分がそういった不利な示談書にサインをしたなどとは、思ってもいない。
 そもそもアコムの示談書には「本契約のローン債務に関し、本示談が定める他には、甲と乙官には何らの債権債務の無いことを確認する」とあり、過払金は「ローン債務に関し」て生じたものではないとする反論がまずありうる。すなわち、ローン取引から、ローン債権と過払金債権が生じるのであり、両者は別個独立に発生するものである。またローン債務は貸付から発生するが、過払金は返済から生じるものであり、その原因事実も異なるからである。
 また、錯誤無効であり和解は無効であるとの主張もありえよう。しかし、これに対しては、過払金は「争いの目的である権利」であり、696条よりすれば、錯誤無効を主張できない、という反論が必ず被告からなされる。これに対しては、争いの目的となっていたのは、貸金債権であって、過払金ではないとの原告の再反論がなされ、それに対して貸金債権と過払金は表裏一体のものであり、争いの目的に一方がなって、他方はならないなどということはありえない、との再々反論がありうる。
 さらには、消費者契約法10条を主張するというのも一つの手ではないか。
 同契約の清算条項、貸付条項は、

  1. 本来同原告が有し行使しうる過払金請求権を放棄させ、かつ、本来負うべきでない債務を負担させるものであり、
  2. 原告が法律に無知なことをいいことに、あたかも有利な条件で契約を締結するかの如く装い、同原告の過払金債権を放棄させた上に、本来支払う必要のない貸金を負わせる契約をしたのであり、
  3. 同原告の利益を一方的に害するものなのであるから、

貸付条項、清算条項は無効であると主張するのである(消費者契約法10条)。
予備的主張として、同法4条1項による契約の取り消し主張をするのもいいかもしれない。