EU首脳会議 嬉しい誤算

 EUは、これまで市場の期待を裏切り続けた。危機対応もtoo small,too late。話がまとまりかけたと思うと常にドイツがぶち壊してきた。ギリシャ危機がスペイン危機に拡大するのではないかという状況のなか、先般、EUが下した結論は1000億ユーロの支援だったが、スペイン政府を介しての支援というものだった。そのため、非難ごうごう。それでスペインの銀行は助かるだろうが、スペイン政府が債務を肩代わりすることになるからだ。そのためスペイン10年物国債の利回りは7%を超え、まさにユーロは土俵際に追い込まれた。本来は、スペイン政府を介さず、銀行に直接融資すべきなのだ。しかし、そうならなかった。それはドイツが強硬に反対したからだ。
 ロスカボスサミットでも、ドイツは集中砲火を浴びたが、メルケルはスペイン支援にも冷淡な態度を貫いた。そうして開かれたEU首脳会議。どうせ、ドイツが反対して、大したことは決まらないだろうというのが、市場の大方の予想だった。しかし、EUがとんでもないサプライズを演じてくれた。
 28日から始まった会議は、日付が変わっても終わらず、29日早朝にもつれ込んだ。会議後のファンロンパイEU大統領バローゾ欧州委員長の記者会見場で、記者は数えるほどだった。どうせ大したことニュースはないだろうと、記者までが見限っていたのだ。ところが発表された合意は良い意味で期待を裏切る内容だった。これまでスペインの銀行に、スペイン政府を通じて支援することにしていたのを、直接銀行に注入することになった。しかもEFSFと違ってESMの融資は、民間債務より優先権が与えられる仕組みだったのが、優先権を与えない扱いとなった。

  1. 単一の金融監督メカニズムの新設を提案
  2. その設置後欧州安定メカニズム(ESM)による金融機関への直接の資本注入を可能とする。
  3. EFSFとESMの活用でユーロ圏の金融安定に必要な措置をとる(南欧諸国の国債購入)
  4. スペインへのEFSFとESMによる支援融資には優先弁済権はつけない。
  5. 経済の脆弱な国へのインフラ整備への融資に600憶ユーロ、中小機嫌支援・若年層の雇用対策に600億ユーロ、インフラ事業債を活用した事業50億ユーロ等の成長戦略

 当初は、成長戦略だけでお茶を濁すだけの内容に終わりそうになったところで、28日夜、イタリア、スペインが唐突に成長戦略に反対。このちゃぶ台返しに泡を食った、各首脳がイタリア、スペインがもとめる、銀行への直接注入を認め、ドイツがその代りユーロ圏の銀行監督の一元化を認めさせた。これが舞台裏らしい。
 この嬉しい誤算に、29日のニューヨーク・ダウ平均は反発、終値は前日比277ドル83セント高(2.2%)となった。おそらく日経平均も上がるだろう。今後いかに具体化となるか不透明だが、とりあえずはいいニュースである。