ギリシャの預金流失

 17日のギリシャ総選挙を間近に控え、すでにその結果を先取りしたような動きがある。預金流失の加速だ。5月の総選挙で急進左派が大勝し、内閣組閣が難航、1週間で8億ユーロが流出した。しかし、先週に入った辺りからさらに加速し、1日当たり5〜8億ユーロが引き出されている。
 急進左派が政権が取れば、ギリシャのユーロ離脱が現実のものになりかねない。英RBSのあるストラテジストは「そうなった場合でもすぐにはユーロ離脱ということにはならないだろうが、年内に離脱する確率は50%、最終的に離脱する可能性は90%」との予測を立てている。
 その根拠は「EU、IMFの要求する緊縮財政策を守るとなると、今ある20%超の失業率がさらに跳ね上がる。これほどの失業率に耐えられる社会はそう多くはない。」という点にある。
 経済不振の国もユーロにとどまっている限りは、市場からある程度の信任は得られていた。それは「ユーロはいったん参加したら後戻りできない」ものだと考えられていたからだ。ギリシャのユーロ離脱が起これば、その前提が崩れてしまう。そうなれば、スペイン、イタリア等に影響が波及するにとどまらない。ユーロ自体の信任が失われる。そうなればドイツ国債も無事ではいられないだろう。
 結局、処方箋としては、ユーロ共同債を発行し、資本不足の銀行に対しては、その国の中央銀行を通さず、積極的に資本を注入し、預金保護の共通のシステムを作る必要がある。そうなると事実上政府の予算運営を一体化する財政同盟につながりねない。市場はそれを期待しているが、ドイツが簡単にはうんとは言わないだろう。