スマホをめぐって、日中台対サムスンの構図

シャープ・鴻海がスマホで提携

シャープは3月27日、鴻海グループが事実上の筆頭株主になるとともに、鴻海董事長の郭台銘(テリー・ゴウ)から、大型液晶パネルを生産する堺工場の運営会社への出資を受け入れると発表していたが、6月8日、都内で開いた経営戦略説明会で、台湾の鴻海精密工業と中国市場向けスマートフォンの協業で合意したと発表した。中国向けスマホを共同で開発し、生産を鴻海に委託する。鴻海が中国成都に計画中の中小型液晶パネル工場にシャープが最先端技術を供与することも最終調整しているという。
シャープには最先端技術があり、鴻海には資本と低コストで生産するノウハウがある。資本力、技術、低コスト生産のすべてを兼ね備えるライバルのサムスンに勝つためには、両者の提携は不可欠であるといえるだろう。中国に生産拠点を移すことで、中国政府の後押しも期待できる。「中国政府+日台連合」対サムソンという構図が見えてくる
さらに、アップルの受注競争の面も重要だ。iphoneのタッチパネルの仕事をどちらがとるかが、企業の命運を分けている。サムスンはiphoneに部品を供給する一方で、自らもギャラクシーというスマホを作っている。アップルにとってみれば、サムスンは敵でもあり、協力企業でもある。そのため、アップルはサムスンへの依存をこれ以上深めたくないとの考えもあるという。となると、シャープと鴻海との提携は、対アップルでも大きな前進と言えるだろう。
 シャープの堺工場は、大型液晶パネルを生産する最新鋭工場でありながら、稼働率が50%を切っており、宝の持ち腐れというか、巨大なお荷物になっていたが、第2・四半期から鴻海精密工業分の引き取りを開始する予定。シャープはこれにより、第2・四半期から堺工場の稼働率を90%になると見込んでいる。
 今回の提携で、シャープの持つ技術が、鴻海、中国に流出する可能性はある。しかし、このまま技術を後生大事に抱えていても、そのうちサムスンはその資金力に明かせて技術面では追いつきつつある。シャープも技術を売り込む最後のチャンスかもしれない。

増資割合の持つ意味

 第三者割当増資は、鴻海精密工業に対し、2月29日現在の発行済普通株式総数の4.50%の新株式を譲渡し、鴻準精密工業に対し同0.72%、FOXCONN FEに対し同2.80%、Q−Runに対し同2.92%を譲渡する。発行価額は1株550円、調達資金の額は約670億円。払込期間は平成24年5月31日から平成25年3月26日まで。しかし、なぜ一つの企業が新株を引き受けないのか。これはシャープ側の都合らしい。もし鴻海が1社で10%以上の株を持っていると、筆頭株主になってしまい、メインバンクの機嫌を損ねるというのが、その理由らしい。実に日本らしい理由だ。馬鹿げている。

サムスンもアップルシフト

 サムスン電子には、ギャラクシーを生産する完成品部門と、アップルに部品を提供する部品部門との双方がある。サムスン電子は、部品部門を総括する権五鉉副会長にCEOを兼務させ、完成品部門の総括である崔志成副会長兼CEOはグループ未来戦略室長に異動したと発表した。アップルから見れば完成品部門はライバル、アップルにとって部品調達先である部品部門は協力者。サムスンもアップルの仕事を取るため、部品調達部門統括を務める権をCEOにしたのであろうと噂されている。