スペイン国債格下げ

 フィッチは6月7日、スペイン国債を「シングルA」から「トリプルB」へと3段階引き下げた。見通しは「ネガティブ」。トリプルBは投資適格級の中では最下位の格付け。。
 フィッチは格下げの理由として、スペインが打ち出した銀行救済策に600億〜1000億ユーロの資金が必要になると見込まれ、長引く景気後退は2013年いっぱい続く見通しだと指摘。同国はギリシャの危機に伴う事態悪化の影響を特に受けやすいと述べ、「欧州レベルでの政策の誤りが、スペインの経済および財政問題に追い打ちをかけた」との見方を示した。
 現在スペイン国内大手銀行バンキア(7つのカハが合併してできた銀行)は政府に約190区ユーロの支援を要請。これが口火となり、ほかの中小金融機関も相次いで政府に支援を求める可能性がある(というようり無理矢理にも注入する必要がある)。IMFは最低400億ユーロは必要と、6月8日付で発表したが、2000億ユーロの資本注入が必要との見方もあるようだ。
 また預金流出も深刻だ。ECBの調査によると、スペイン国内銀行の預金残高は3月末当時5146億ユーロで、直近ピーク時11年6月から比べると250億ユーロ、5%目減りしている(5/22日経)。イタリアは1%弱、ポルトガルは3%弱だから、それを超えている。その後にギリシャの与党の総選挙敗北、バンキアの支援要請、長期金利の急上昇が起きているから、さらに流失している筈である。
 スペインの金融機関は不動産バブルの崩壊によるダメージが大きい。政府による金融機関への支援額はすでに約200億ユーロの規模に達している。政府が資金注入をすれば、国債の信用が低下。10年もの国債は7%近くまで上昇。ポルトガルギリシャアイルランドがEUやIMFに援助を求めた時に近い水準である。
 スペインはユーロ圏内で独仏伊につぐ4番目の大国。万が一破たんした場合の影響力はギリシャと比較にならない。
 今後なすべきことは明らかだ、まずは、今年7月に設立する欧州安定メカニズム(ESM)から、経営難に陥った銀行に直接資金注入を行う仕組を整えなければならない。現在想定されている仕組みだと、ESMがスペイン政府に融資し、政府がスペインの銀行に融資することになっている。しかし、これだと
銀行への資本注入増加→スペイン国債価格下落→同国債を大量に保有するスペイン国内銀行の財務の悪化→資本注入の増加→、、、
という悪循環になってしまう。これを、正すことが絶対必要だ。6月7日付日経は欧州委員会レーン副委員長の「債務問題と銀行問題の関連性を断つことを考えている」との発言を伝えているが、これも同じ文脈によるものだ。
 2つ目は、ユーロ圏の銀行全体で預金保険団体を設立し、圏内の銀行預金を保護し、預金者に安心感を与え、預金の流出を最小限に抑えることが必要だ。
 ただ、ここで障害になるのがまたしてもドイツだ。ドイツは、こうした改革が進めば、やがては財政統合につながりかねないことを警戒している。メルケル、ジョイブレが余計ないことを言わないよう、切に願いたい。もっとも5月22日にIMFラガルド専務理事の「IMFとしては、財政的な負担を分け合うというやり方で、もっと対応する必要があると考えている」との発言し(ロンドンでの記者会見)、ユーロ共同債の発行を促した(5/23日経)。しかい、それでも動かないのがドイツだ。6月9日、スペインの国内の行救済のための支援要請に応じ、ユーロ圏財務相は、EFSFを通じ最大1000億ユーロの支援を行う用意があるとの声明を発表した。しかし、この支援はスペイン政府への緊急融資という形で行われ、銀行への直接的な資本注入は行われないことになった。ドイツが直接的な資本注入はEFSFの財政を悪化させると(そうなるとまたドイツが金を出さざるを得なくなる)、強硬に反対したためだ。