米就業者数、予想大幅に下回る1万8千人増

米雇用統計発表

労働省は7月8日、6月の米国の雇用統計を発表した。非農業部門の就業者数は前月比1万8千人増にとどまり、事前の市場予測(9万人増)を大きく下回った。失業率は同0.1ポイントアップの9.2%。前月5月の就業者数の増加幅も、2万5千人増(当初発表は5万4千人増)に下方修正された。
就業者数の増加は9カ月連続だが、そのなかで最も小さい増加幅となった。民間の雇用者数が5万7千人増と小幅にとどまり、景気対策が終わった反動で政府部門は3万9千人減となった。

1.8万人増という数字の持つ意義

 7日発表の新規失業保険申請件数が改善していただけに、悪い意味でのサプライズだ。
 米雇用はリーマン以降860万人の雇用を失い、その後3年かかって180万人の雇用が回復されたに過ぎず、未だ680万人の雇用が失われたままだ。月1.6万人増のペースでは、10年以上しないとリーマン以前の雇用は回復しない。しかも米国は就労可能人口が今でも増えている。1万8千人増は、米国にとって雇用悪化となる。

QE3の可能性も

 失業率が今度も悪化し10%に近づくようだと、FRBに対してQE3を求める声も大きくなる。もし量的緩和再開となれば、新興国へのマネー流入の拡大、商品価格上昇、円高というかつて来た道をたどることになる。
参考:asahi.com 2011年7月9日0時2分
「米雇用わずか1.8万人増 6月、市場予測大きく下回る」
http://www.asahi.com/business/update/0708/TKY201107080678.html

バーナンキ追加的金融緩和の可能性を示唆

 バーナンキFRB議長は7月13日、米国の景気回復が緩慢な状態が続いて失業率が下がらず、物価上昇率も下がる可能性があると言及。そうした事態になれば、追加的な金融緩和を行う用意があると示唆した。
 半年に一度の米議会証言で述べた。「金融政策の調整が適切となる事態になれば、対応する用意がある」と表明。景気がさらに減速した場合、証券の追加購入に踏み切る、ゼロ金利などの長期の継続についてはその期間も明示する、といった策がありうるとした。
Asahi.com 2011年7月14日1時47分
FRB議長、追加金融緩和を示唆 米景気回復遅れ受け
http://www.asahi.com/business/update/0714/TKY201107130816.html
(11.7.14追加)

ある算式

 潜在成長率から現実の成長率を引いて2で割ると失業率の変化幅になると言われているそうだ。米の潜在成長率は2.5%。GDPが3%成長しても、0.5%しか失業率が改善しないことになる。
(11.6.29日経朝刊5面・十字路・中島精也伊藤忠商事チーフエコノミスト