米国中東外交の破綻

ファタハハマスの和解合意

 06年1月の選挙でハマスが勝利、政権を獲得したが、欧米諸国がハマス武装闘争を放棄するよう迫り、一度はハマスファタハの連立政権が成立。しかし、結局は連立は崩壊。07年から、ヨルダン川西岸地区ファタハが、ガザ地区ハマスが実効支配し、対立を続けてきた。
 ファタハは米国の仲介でイスラエルと和平協議を続けてきた。しかし、イスラエルで、タカ派のネタニヤフ政権が成立。同政権は米国の反対にもかかわらず、ヨルダン川西岸地区でのユダヤ人入植を再開。面子を失ったファタハは、4月27日ハマスと和解することに基本的に合意し、1年以内に議長と、自治評議会の選挙実施を目指すこととなった。

エジプトの政変が影響

 エジプトでは、親米ムバラク政権が倒れ、将来樹立される新政権ではムスリム同胞団の影響が強まることが確実視されている。エジプトのムスリム同胞団は知的エリート層が指導層を形成しており、ハマスとは一線を画しているが、ムバラク政権に比べればはるかにパレスチナ寄りだ。ただハマスも元はムスリム同胞団から発展した組織であり、ハマスムスリム同胞団と協調し、エジプトの親米、親イスラエル政策を転換させることもありうるとされる。

欧米の反応は

 米国は、ファタハを支持し、イスラエルとの和平を進め、他方ハマスをテロ集団として関係を持たず、一昨年ガザに侵攻したイスラエルにも非難をしなかった。ファタハが、イスラエル生存権を認めないハマスと和解することで、イスラエルとの和平交渉は棚上げとなる。米国からの反発も覚悟の上だろう。
 欧州は、これまでパレスチナ問題については、米国と足並みを揃えてきた。しかし、風向きが変わる要素が二つある。一つは一昨年のガザ侵攻、一つはリビア問題についての対応の違いである。一昨年のイスラエルのガザ侵攻では、イスラエル軍が市民に対する無差別攻撃をしたことが国連でも問題となった。ハマスイスラエル停戦後も、人道支援物資をハマスに輸送しようとした民間団体の船をイスラエル特殊部隊が襲撃、死者を出した。こうしたことが、欧州の反感を買っている。ハマスがテロ組織だとしても、イスラエルもどっちもどっちという観方も出てきている。
 もう一つはリビア問題。米国はリビア内戦については、軍事行動を全て欧州に任せ、我関せずの態度だ。米国はイラククウェートの油田に権益ないし強い関心を持っており、湾岸戦争イラク侵攻については欧州の応援を受けた。しかしリビアでは、欧州の権益が主なため、EUに任せるとして、全く関与していない。じゃあ、イスラエルパレスチナの和平は米国が勝手にやっていればいいという反応も当然あるかと思われる。こうしたこともファタハハマスの和解の理由となってはいないだろうか。