東電原発事故に公的資金

原発賠償・保険機構

 福島第1原発の事故での賠償額は最終的にいくらになるか分からないが、兆円単位になるのは間違いなさそうだ。東電の年間利益は1000億円程度で、到底賄いきれない。
 政府内で原発賠償・保険機構を設立する案が浮上しているという。この機構には民間金融機関が融資をし、電力会社が保険料を支払うが、前者の融資について国が保証する。補償債務の発生で資本が減少した場合、国が機構を通じて優先株を引き受け、実質的な資本注入を行うことも行う。東電は10年など長期間をかけて配当を支払う形で公的資金を返済するという。

預金保険機構の焼き直し

 これは預金保険機構と似た仕組みだ。こうした仕組みを設けるのは「国民の税金を使って東電を救済するのか」という批判を回避するためだ。こうした仕組みを作っておけば、「税金は使っていません。保証しているだけです。政府が最終的にお金を出すことになっても、原発賠償・保険機構に対してで、民間企業たる東電に出す訳ではありません。」と言い訳できる。
 預金保険機構でもこういった仕組みを作っているために、「税金ではなく公的資金」と言い張ることができる。回り回れば国民の税金なのだが、こうした仕組みを介することで、「公的資金」という訳の分かったような分からないような便利な言葉を使えるのだ。

交付国債

 政府は4月20日、この新機構には交付国債を割り当て、賠償支援の資金とする案が有力になっている、という。
 交付国債とは、政府が現金を支払う代わりに発行し、交付する無利子の国債で、通常記名式である。交付を受けた者は資金が必要になったときに、政府に提示し、支払いを受ける。政府にとっては、発行時に予算を全額計上する必要がないため、当面の財政負担を抑えられる利点がある。
 前述の預金保険機構も、この交付国債を国から交付されている。ますます預金保険機構の焼き直しとなっている。(11.4.25追加)