東電の役員を総入れ替えしては

久保克行教授の研究

 「コーポレート・ガバナンス、経営者の交代と報酬」を著した久保克行早大教授が3月31日付日経に興味深い論考を寄せていたので、紹介する。久保教授は、日経225の対象企業中、金融、電力、ガス会社を除く企業を対象に、経営者の交代、報酬とがその会社の業績にどう反映するかを調査している。
 すると業績の悪い会社も業績の良い会社も、社長交代のペースは変わらないという。要するに無能な経営者も、優秀な経営者も任期が変わらないということだ。
 また社長交代1年前の経常利益が赤字の企業(39社)では、社長交代後に業績が大きく回復しており、交代1年前と交代3年後とで総資産利益率(ROA)が約3.6%向上している。また社長が交代した後の業績がもっとも改善されるのは後任社長が外部出身の場合である。後継社長が従業員や創業家の出身だった場合には業績の大きな改善は見られなかったという。

GMは外部役員を入れて再生

 GMは09年6月、会社更生手続(チャプター11)を申請、米政府の管理下に入ったが(GM株の6割を保有)、オバマ政権がワゴナーに退任を要請し、ヘンダーソンがCEOが内部昇格しCEOになったが、彼も業績不振の責任を取って辞任。オバマの指名で会長職についていた元AT&T会長のウイッテーカーがCEOについた。
 ウイッテーカーは、官僚的と評されるGM経営陣を刷新すべく、幹部級社員の多くを入れ替え、8ヶ月で辞任し、通信大手出身のアカーソンがCEOを引き継いだ。
 自動車業界に縁もゆかりもない人間がCEO職につくことを不安視する声もあったが、結果的には成功だった。GMは急速に業績を回復させ、10年11月には新規上場し、これにより1兆9000億円を調達した。
 GMの元役員ジョン・デロリアンへのインタビュー記録「晴れた日にはGMが見える」には、変化を嫌い、ただただCEOにゴマをするGM役員の醜悪な姿が描かれているが、腐ったリンゴの木からは腐ったリンゴのみしかならない、ということだろう。

東電も外部から役員を入れろ

 東電は、現在袋叩きにあっているが、官僚体質ゆえに、隠ぺいと事なかれ主義が横行、結果原発の安全性が犠牲にされたことが、報道で明らかにされた故だろう。
 東電も、トヨタなど、日本のトップ企業から役員を招き、膿を出し切るべきではなかろうか。