サルコジ押し掛け支援

サルコジ来日

 フランスのサルコジ大統領が31日来日し、菅直人首相と会談した。両首脳は、原発の国際安全基準の策定に向けて取り組むとともに、この問題をフランスが議長国を務める今年のG8、G20の主要議題とすることで合意した。日本政府サイドとしては「混乱した時期でもあり、今来られても困る」と仏側に伝えていたようだが、サルコジが押し掛けてきた形だ。
 理由は二つ、国内原発産業の利益擁護のため、もう一つは政権維持だろう。

ドイツで緑の党が大勝

 3月27日の独バーデン・ビュルテンベルク州の州議会選挙では、独国内の原発の安全性が最大の争点となり、脱原発を掲げる緑の党が大躍進を遂げた。同州の州都シュトゥットガルトはドイツを代表する工業都市で、ダイムラー、ポルシェやボッシュなどドイツを代表する企業の本社がおかれ、同州はドイツでもっとも豊かな地域といわれている。保守勢力の強いこの州で、緑の党の州首相が誕生したということが、ドイツだけでなく、欧州全体でも大きな驚きを持って迎えられている。

社会党脱原発に方針転換

 3月25日フィナンシャル・タイムズ紙によれば、仏野党の社会党は、数十年来の原発推進政策を転換し、20〜30年間で原発を廃棄する方針に転じたという。
 こうなると、仏原子力企業アレバのセールスマンとして世界中に原発を売り込んできたサルコジとしては、尻に火が付いた思いだったろう。無能な東電が、福島第1原発から放射性物質を垂れ流し、何ら有効な手を打てない現状は、サルコジにとっては切磋扼腕といった状況だ。是が非でも事態を収束させなければ、政権を失うかもしれない、そういった状況に追い込まれている。
 もし、菅が「もう原発はやめようか」などと言い出せば、仏社会党がさらに勢いづくことになる。そのため、菅にねじを巻かないとという狙いも当然あったはずだ。サルコジとしては、福島第1原発の危機を何とか収束させ、G8、G20で「原発について世界的安全基準を定め、原発安全宣言をしたい」と考えている筈だ。できれば、安全基準についての世界標準についても主導権を握りたいという欲もあるかもしれない。

アレヴァの打算

 仏企業のアレヴァは、世界最大の原子力産業複合企業で、傘下に複数の原子力産業企業を有する持株会社である。同社の強みは、ウランの採掘、加工、原子力発電、再処理、送電と、川上から川下までを一手に賄っている点にある。同社はサルコジの来日に合わせ、放射線防護服1万着、環境測定車2台、ポンプ10台、再臨界を防ぐホウ酸100トンを無償提供し、専門家チームも派遣すると言う。
 これを善意の贈り物ととるのは、早計だ。福島第1原発の事故処理に参加することは、アレヴァにとって大きな財産になる。防護服を日本人に着せて、貴重なデータやノウハウを得ることができ、さらには(放射線下での作業方法の確立に必要な)人体実験ができる。アレヴァにとってこの程度無償提供しても、ソロバンは十分にあう。
 逆に言えば、だからこそ東電(さらには東芝も)も海外の技術援助を頑なに断ってきたのだろう。ただ、自分では処理できないのだから、早々にも海外から技術援助を受けるべきだったのではないか。