Jトラスト武富士入札に対しGSが資金提供

総債務額は1兆3000億円

 武富士は会社更生手続中だが、カギを握るのは武富士の貸金事業を、どの会社が、いくらで買い取るかだ。買取金額によって、配当率が変わってくる。後者について言えば、武富士の更生債務は1兆3000億円、買取価格が1300億円を切ると配当率は1割を下回る。1%を下回る可能性は大きく、数%ということも十分ありうる。
 3月4日付ロイターによると、武富士の営業貸付残高は法定利率による再計算の結果、750億円になったという。この価格だけを基準に考えると配当率は5.8%ということになるが、ことはそう単純ではない。
 この750億円という金額は、現金としてある訳ではない。今後人を使って、督促、回収することで初めて獲得できる金額であるから、これを現金化するにはそれなりのコストがかかる。またこの750億円の中には、債務整理中のものもあろうし、今後貸倒になるものもあるだろう。そうすると、ここから大きく減価する。そうなると実質的価値は500億円を切るだろう。

武富士ののれんの評価が焦点

 しかし、企業によっては、「武富士」というブランド、ノウハウ、組織力、人的資源に魅力を感じて、資産価格以上の値をつけるかもしれない。いわゆる「のれん」の問題だ。
 買取企業がどこになるかも注目だ。31日に最終入札があり、その結果が待たれるが、入札企業は、Jトラスト、投資ファンドサーベラス・キャピタル・マネジメント、TPG、韓国の消費者金融A&Pフィナンシャルの4社だ。東京スターも一時入札の意向を示していたが結局も見送った。

GSがJトラストに資金提供

 31日ロイターによると、入札企業4社のうちの1社Jトラストに対し、米ゴールドマン・サックスが資金提供する見通しとなった。ロイターは「Jトラストはすでに貸金業を手がけており、これまでも有力な支援者候補とみられているが、GSによる資金提供を得て、存在感が増すことになる。」と評している。

もしもJトラストが落札したならば

 もしJトラストが落札したとなったらどうなるであろうか。Jトラストはネオラインキャピタルグループの旗艦的存在だ。ネオラインは、SFコーポレーション(旧三和ファイナンス)、NISグループ(旧ニッシン)、ロプロ(旧日栄)、フロックス(クレディアが母体)、クラヴィス(旧ぷらっと)、アペンタクル(旧ワイド)、ヴァラモス(旧トライト)、クラン(旧パスキー)と言った、破たんした消費者金融を買い上げ、高収益企業に育ててきた。その手法は単純明快。弁護士が介入してきても、過払金については徹底的に減額を求める半面、残債務が残るものについては、一括返済、短期返済を求めるからだ。例えば100億円の貸付金があるが、200億円の過払金も抱えている企業があったとする。こんな赤字企業買っても意味はないと考えて手を出さないのが普通だ。しかし100億円の貸付金中、80億円を回収し、過払金を値切って1割の20億円しか払わなければ、60億円の利益が出る。ネオラインはこのような錬金術的手法を屈指して、のし上がってきた企業だ。
 こうした企業が武富士の750億円の貸付金を取得したらどうなるか。この750億円のかなりの部分が、既に弁護士が介入し、債務整理を求めている。しかし、ここ2年近く、多くの弁護士が武富士と分割和解をしないできた。というのも、通常弁護士が介入して債務整理するとなれば、元金のみを分割して支払う内容で和解できるのだが、武富士は平成21年夏ころから、完済するまで年18%の利息をつけるように主張して一歩も引かなかったからだ。このため多くの弁護士が和解をしないまま塩漬けにしている。「武富士もそのうち苦しくなって、利息無で和解してくれ、と言ってくるだろう。」との読みがあってのことだ。しかし武富士は、頑迷に債務整理案件についても将来的に利息をつけるよう主張し続け、ついに破たん。多くの弁護士はこれで、残債務あるものについても和解が進むだろうと安堵した。しかし、ネオラインが武富士を買い取ると、こうした楽観は吹き飛ばされる可能性がある。東京地裁の英慮が求められるが、いかなることになろうか。