G20通貨制度改革の方向
ふたつの方向性
11年2月のパリでのG20財務相・中央銀行総裁会議で、通貨改革の方向が定まった。ひとつは世界経済の不均衡是正問題で、もうひとつは地域ごとの流動性供給制度である、IMFの下に、この両問題に関する作業部会が設けられた。
世界経済の不均衡是正
世界経済の不均衡とは、中国のように巨額の貿易黒字を抱える国がある一方で、米国のように巨額の貿易赤字を抱える国もある。こうした不均衡が先の経済危機の大きな原因となっており、これを是正すべきと言うものである。
この問題は、前回のG20ソウルサミットで、米国が提起したものである。輸出倍増計画を掲げる米国はこの問題を取り上げることで、中国の為替操作を止めさせようと図ったのである。そして不均衡是正を定めるための指標として、貿易収支を取り上げ、貿易赤字をGDPの4%以内に納めようとした。しかし、この提案には中国ばかりか、ユーロ安の恩恵で多額の貿易黒字を出しているドイツが猛反発。世界経済の不均衡を作った犯人について、米国は中国が為替操作をしているからだと言い、中国は米国が超金融緩和で世界中にドルをバラまいているからだと主張した。中国をブラジルが援護射撃。米国がドルをバラまいているから、新興国にドルが流れ込んで物価が上昇するし、資源価格が高騰するのだと主張したのだ。
前回のG20では、世界経済の不均衡が問題なのはわかるが、その是正のための指標をどうするか今後決めましょうと言うことになった。それが今回のG20である。
前回のソウルサミットでは、今後世界経済不均衡是正を今後の課題とすることに決まったのだが、米外交勝利で終ったわけではない。IMFの下に国際資本移動についての作業部会が設けられたが、これはブラジルの主張と重なっている。
世界経済不均衡を、米国の主張する貿易収支と、中国の主張する財政収支との双方を参考指標に計ることになったからである。