原油高騰が及ぼす影響

原油はどこまで上がるか

原油はどこまで上がるのか。反政府運動が、隣国のアルジェリア、さらにはサウジにまで及ぶとなると、08年7月に記録した1バレル147ドルをも更新し兼ねない。
中には、サウジが増産すると発表したので大丈夫、と言う声も有るが、サウジの生産余力も実際にはどれほどあるのか不明である。サウジ王家は米の庇護化に有り、米に恩を売るため、常に生産余力を残し、原油価格が高騰すれば増産することで、原油価格の調整弁となっている。サウジの膨大な生産余力は、リビアアルジェリアの生産量を補って余りあるということになっているが、実は粉飾していた、なんてこともありえない話ではない。
仮に、サウジが増産に踏み切っても、OPEC全体の総意ではなく、OPECが大規模な増産に消極的な場合、サウジはどこまで増産に踏み切れるのだろうか。またサウジの原油に比べてリビア原油が良質なため、どこまで代替できるかという疑問も有るようだ。
また08年7月当時は、まだ新興国が景気拡大に動いていたから、147ドルまで上がったが、現在は新興国も景気の過熱を怖れている状態であり、かつてとは違うという見解も有るが、新興国は為替介入によるバッファーが有り、相当程度そこで埋めることもできるのではないか。新興国は実質マイナス金利状態が続いており、生産意欲、消費意欲は依然堅調であり、原油価格上昇の余地はなお残っている可能性が有る。

米国への影響

仮に原油高騰がさらに進んだとした場合、一番影響を受けるのは米国かもしれない。25日発表の10〜12月期の実質GDP成長率はプラス0.4%。このとき個人消費支出が4.1%増、民間設備投資が5.3%で、これが成長のエンジンになっているが、車が生活に不可欠な米国で原油価格が高騰すれば、これらの数字は大きくダウンする。また3950億ドルの貿易赤字も拡大する。
FRBもせっかくQE2によるプリンテイング/マネーで、株価を折角つり上げたのに、その効果も台無しになる。

中国への影響

中国政府にとって一番の頭痛の種はインフレだ。食物価格が急騰しており、庶民の生活を大きく圧迫している。ここに原油の高騰が加わるとなれば、庶民の生活は成り立たず、政府への不満が高まりかねない(この点は他の新興国も同様)。不動産価格も上昇が続いており、中国政府はさらなる利上げをするだろうし、さらには人民元も上げる可能性が有る。中国経済内需と外需のバランスをどうとるかが重要で、いきなり内需にバランスを移すと、今度は外需が失速しかねない。政権運営はより難しくなる。
11.2.26付日経記事によると、中国人民銀行の易綱副総裁は経常収支黒字のGDP比4%が中国の中期目標だという(ソウルサミットの米提案とも符合する)。

欧州への影響

原油価格の上昇は、現在のインフレを加速する。金融政策上、価格変動の大きな食料品、エネルギーを除いたコアCPIを重視する考えも有るが、ECB内でこれを重視するのは少数派だという。既にドイツ連邦銀のウエーバー総裁は利上げを示唆しているという。3月3日のECB理事会の行方が注目されている。春先にも前倒しして利上げが行われるのではとの観測がある。

日本への影響

やはり心配なのは、原油高、そしてドル安からくる円高だろうか。

世界経済全体への影響

11年2月25日付日経によると、「1バレル10ドルの価格上昇は、世界全体のGDPを0.5ポイント低下させる」という資産があるそうだ。