原油高騰は一時的か

一時期原油1バレル100ドルの大台に

23日、WTI(ウエスト・テキサス・インターミデイエイト)の期近物が1バレル100ドルを突破した。サウジに反政府デモが広がれば08年7月に記録した1バレル147ドルを突破するのではということも危惧する無機があり、21日から23日にかけては急落したものの、24日は当初は安値をつけたものの原油価格が上昇に転じ、25日には上昇に転じた。

原油需要はまだら模様

本来ならば軽質油であるテキサス原油の方が、北海原油、ドバイ原油より高いのだが、米国の過剰在庫の現状を反映して、北海ブレント先物が1バレル120ドルと価格が逆転している。米国では原油は過剰在庫を抱えている一方で、欧州はリビア原油への依存度が高いため、このような逆転現象がおきていると考えられる。

25日ダウ反発の理由

サウジアラビアは25日、原油生産量を日量900万バレル超に引き上げたと、ロイター通信が伝えた。OPECが協調増産に否定的なため、単独増産に踏み切った可能性がある。IEAによると、サウジの生産量は昨年12月時点で日量860万バレルで、数十万バレル規模の増産とみられる。サウジは原油価格が147ドル台の最高値を付けた2008年にも単独で増産を表明している。こうしたこともあって、原油価格が下落に転じたということだ。
オペック全体の増産余力は日量約520万バレルと言われているが、その多くをサウジが占めている。サウジの生産余力がどれほどあるかは実際はよく分かっていない。報道では350万バレルという数字も出ているが、前アラブ首長国連邦大使で東洋エンジニアリング副社長の波多野琢磨氏は、200万バレルほどではないかとしている。
http://www.tokyo-rc.gr.jp/jts/1001_11.htm
サウジアラビアは、大戦後、アメリカにサウド家を守ってもらう代わりに西側諸国に必要なだけの石油を供給する約束をしている。サウジとしては火の粉がいつ自国に及んでくるかも分からず、欧米に恩を売っておく必要がある。
サウジは一時500万バーレルとも,600万バーレルともいわれる生産余力を持っていたが、その後の増産により現在の生産余力は上記のとおりではないかというのが波多野氏の意見だ。
仮に、リビアからアルジェリアに反政府デモの勢いが広がった場合、両国の原油生産量は日量285万バレルで、サウジの生産余力が200万バレルだとしたら、これを上回る。

リビアはいつけりがつくのか

国連安保理は26日、カダフィや家族らに渡航禁止や資産凍結などを科す制裁決議案を全会一致で採択した。決議は、カダフィが行っている市民への無差別攻撃が、人道に対する犯罪に当たる可能性があるとも指摘。国際刑事裁判所に捜査などを付託することも盛り込まれている。しかしカダフィはこの安保理決議を「報道に基づいて決定を行っている」「なんの価値もなく、違法だ」と去勢を張っている。国民を無差別に殺したカダフィは対陣したら、死刑を待つしかない。カダフィが強がるのは当然と言えば当然だろう。 そうなると、今後も内乱状態は続かざるを得ない。
最終的には、反政府勢力が勝つだろうが、カダフィが独裁を続けていたため、反対勢力ばらばらで今後も混乱が予想される。元々、東部と西武とで根深い対立が有り、原油の分け前でどう揉めるかも分からない。
仮に戦後処理が順調に進んだとしても、フセイン政権崩壊後のイラクでも原油生産現場では混乱がしばらく続いており、生産量が政変前の状態に戻るのに時間がかかりそうだ。

サウジへの飛び火

 民主化運動がサウジに広がるかどうか。市場の関心の一つがそれである。一般的にはその可能性は低いといわれている。サウジが今一番気にしているのがバーレーン情勢だ。バーレーンは国民の7割がシーア派だが、国王はスンニ派。少数派が多数派を支配する構図だ。そのため、バーレーン国内ではスンニ派シーア派という対立が騒乱の元になっている。
 サウジはスンニ派が多数で、シーア派は10〜15%ほどでしかない。しかしシーア派は油井の集中する東部に多くすんでおり、国営石油会社アラムコの従業員の4割を占めているという。シーア派バーレーンの政権を握ると、サウジとしてはそれが国内のシーア派に動揺を与えるのではないか、不安に感じている。