中国はリビアの次になるのか

中国共産党 天安門広場事件を危惧

カダフィ大佐がテレビ演説で、独裁継続、民衆武力弾圧をうたった。その際「天安門広場のように反対派はぶっつぶす」と言ったので、中国政府は慌てた。以前から中国政府は、国内のネットを検閲。天安門という言葉が出ればすぐに削除されているから、カダフィ演説が国内で広まることはないだろうが、現在ネットで27日にデモを呼びかける動きがひろがっているからだ。

構造的には似ているが

エジプトはそれほどだが、チュニジアの事情は、非常に中国に似ている。チュニジア外資導入で経済が大きく発展。欧州工業の下請生産が進んだからだが、その経済成長の果実はアンベリ一族が独占。それまでの独裁体制への累積した不満も爆発したからだ。中国も経済は急成長したが、それで潤っているのは、中国共産党地方政府の幹部連中。120万の富裕世帯が国家の富の9割を支配している。
リビアもそうだ。リビアは東部と西部とが経済的、政治的に対立している。石油の多くが東部にあるが、東部は旧王族を出した部族、これに近しい部族が多く、王制を廃止したカダフィに対して反感が強い。そのため、カダフィは東部の石油から生まれた富を西部に重点配分している。東部の中心が首都のあるトリポリ、西部の中心が最初に反対派が制したベンガジである。
多少話がそれるが、民族紛争というのは、大体が経済の不公平が原因で起こっている。スーダンなどはその典型だ。

中国は軍が民衆側に立つ理由がない

チュニジア、エジプトにしても、政権転覆が成立したのは、国軍の支持があったからだ。リビアにしても、軍の一部が現政権から離反したからこそ、今の反体制派有利の状況が生まれている。
中国には国の軍隊はない。人民解放軍中国共産党の軍である。各地方で、軍、地方政府、警察の各幹部は密接につながっている。地方政府が住民の富を収奪し、用心棒の警察にそのおすそ分けが行く。軍も企業を有しており、地方政府と手を組んで巨利をむさぼっている。軍が民衆の側に立つことは期待できないのではないか。
中国には人民解放軍傘下の企業が2万社あると言う。軍事産業は言うに及ばず、農業、工業、サービス業あらゆる分野に及んでいる。中国新疆ウイグル地区はレアアースに恵まれるが、そこで採掘を行っているのが人民開放軍系企業だ。東トルキスタンとしてかつて独立状態にもあった地区を制圧するために屯田兵的に軍企業が進出している。
 また、マカオが中国に返還されたあとでカジノができたが、このカジノを経営しているのも人民解放軍である。中国では軍事演習が頻繁におこなわれている。実は演習という名目で、実際は民間の荷物を搬送して稼いでいるのが実態なのである。中国では車が省から省へ移動する際には通行税を支払わなければならない。しかし、人民解放軍の車は例外だ。払う必要はない。そこで、軍事演習のトラックの大半が民間の車や貨物を積んで省から省へ移動するのである。もちろん、搬送手数料が幹部の懐にガッポリ入る仕組みなのだという。
http://chy998.exblog.jp/9277872/

失業率の低さが違う。

中東各国で、反体制運動の中心になっているのが若年の失業者だ。その点中国は失業者が少ない。広州では人手不足が深刻で、そのために操業を停止した工場も少なくない。中国共産党政府は「保八」を経済政策の基本に置いている。経済成長率を8%に保ち、失業者を極力出さない政策である。リーマン後の4兆元の経済対策もそのためにある。現状この政策は一応の成功を納めている。「一応の」というのは、現在物価が高騰しているからだ。ことに食品物価の高騰が激しい。食品価格の高騰は、エンゲル係数の高い低所得者層を直撃する。しかし、それでも失業率の低さが中国共産党の救いになるだろう。

受け皿の不存在

そして中国に広がらない最大の理由は、政権の受け皿が存在しないことである。地方地方においては代替する勢力もひょっとしたら存在するかもしれないが、この広大な国土、この膨大な国民を統率する統一政府をイメージすることは不可能である。