バーナンキ1月議会証言

バーナンキ1月議会証言

バーナンキFRB議長は、1月7日、上院予算委員会で景気見通しについて証言。消費、企業設備投資支出等、経済指標に改善がみられるとした。しかし、他方、住宅部門が多くの在庫を抱え落ち込んだままであり、労働市場の状況も控えめにしか改善していないとし、消費と生産の指標も労働人口を増加をさせるには十分でないとした。

雇用最大化がFRBの責務

FRBの責務は「雇用最大化と物価安定」にあるとしている。日銀は物価安定しか言わないが、FRBは雇用を重視する。

雇用の低調

1月7日発表の、米雇用統計。失業率は9.7%の予想に対し9.4%となったが、非農業部門就業者数は10万3000人増と、市場予想の15万人を下回った。米は日本と異なり、人口増加国。人口増を賄うためには15万人の雇用が毎月生み出される必要がある。雇用統計上、積極的に求職活動をしている人のみが「失業者」とされる。失業率が改善したのは、失業者が新たな就業をあきらめて労働市場から撤退したからだ。職探しをあきらめた人の数は12月に130万人に増加。これらの人々は失業率の算定から除外されている。失業状態が6カ月以上の「長期失業」の比率は全体の失業の4割を超しているが、こうした層が雇用市場から撤退して行く。就職を諦めた人も含めた意味での失業率を想定した場合、2割になるのではと言われている。
金融危機で08年から09年にかけて、米では約840万人の雇用が失われたが、10年で回復した雇用は約110万人。金融危機前の状態には程遠い。
バーナンキは雇用が完全に回復するには4〜5年かかるとしている。景気の「見通しは異常なほど不透明」「米国は大恐慌以来、最悪の雇用問題に直面している。」と証言した10年7月のときから、情勢は変わっていない。

なぜ消費が増えるのか

 株価の上昇により、家計のバランスシートが改善され、それた消費増に結びついたのではないか。2010年12月31日のダウ平均の終値は前日比7.80ドル高の1万1577.51ドル。08年のリーマン・ショック以前の水準を回復している。年明けも株価は好調だ。ただ、これは国内景気回復によるものではない。一つにはFRBによるQE2(量的緩和第2弾)によるドルのばらまきによる影響だ。景気対策FRBの資産は1兆ドルから2兆ドルにと2倍に増えているが、その分ドルがばらまかれている。さらにはブッシュ減税の継続。民主党は中間所得層への減税継続を求め、共和党は高額所得層への減税継続を求めたが、オバマは両方とも継続してしまった。
 これだけドルがばらまかれていれば、失業率が上がろうと下がろうと株価は上がるだろう。もう一つは広い意味での海外への生産移転だ。国内からではなく、海外から製品を輸入することでコストを下げ、企業の利益は上がるが、その分国内の雇用は奪われる。
 米株価は、失業率が上がっても、下がっても上がる。上がれば景気回復を好感して株価が上がり、下がればFRBがもっとドルをばらまいてくれるだろうと期待して株価が上がる。

地方政府の窮状

 連邦政府も大変な財政赤字を抱え、危機的状況にある。バーナンキ連邦政府財政赤字は周期的なものではなく、構造的なものとし、赤字改善のために迅速な対応を期待する旨を述べた。
しかし連邦政府以上に危機的なのが、州政府の財政である。州政府は借金を返すための地方債を発行できないから、税収減があれば、財政支出を抑制せざるを得ない。上院予算委員会での証言で、複数の民主党議員から各州に対する支援を検討するよう求められたバーナンキ議長は、「各州ともFRBから融資が得られると期待すべきでない」と言明した。