税制大綱決定

11年税制大綱決定

 12月16日の臨時閣議で11年度税制大綱が決定された。法人減税を実現するため、増税がセットになっている。財務省は、減税効果が増税効果を上回るので、全体としては減税と言っているが、どういった数字の積み上げがあるか詳細が明らかでないので、蓋を開けてみれば大増税と言うことも有りうるかもしれない。

あまり手がつけられなかった特措法

 法人税にはやたら租税特措法が多い。自民党政権時代には、財務省が課税強化を政府に迫ると、政府がその代わり、一部業界を優遇する内容の租税特措法を新設。そのため、特措法が乱立しているのが法人税制だ。民主党は本来特措法を整理することを公約にしていたと思ったが、今回3件の特措法が廃止されたが、法人税の減税規模には到底追いつかない。結局、相続税所得税への課税強化と、繰越欠損制度の一部見直しで帳尻を合わせることになった。

相続税課税強化

 相続税については基礎控除額を減額。現在相続の4.1%ほどでしか払われていない相続税が、7%に増えるだろうと言われている。また最高税率も50%から55%にアップする。
 日本は今後高齢化が急速に進む。現役世代が減少し、所得税が先細りになるのは目に見えている以上、相続税課税強化は今後も続くのではないか。今ある子や孫への資産移転による優遇措置は、今のうち使っておいた方がいいだろう。今回の相続税制の強化は、景気対策的な面もある。要するに「資産をため込んでも税金がかかるだけ、どんどん消費に回そう。」というメッセージとも言える。中長期的には資産課税が全般的に強化される方向だろうし、新税も有るかもしれない。

繰越欠損制度の改正

 法人税増税策で影響が大きいのは繰越欠損算入制度の改正だ。有る年度で、課税所得がマイナスとなった場合、その後何年間(かつては5年だったが、現行は7年となっている)かは、課税所得を減額することができます。例えば上半期利益が50億円出ても、下半期で損が50億円出れば、通年ではプラマイゼロということで法人税は発生しない。繰越欠損制度とは、年度をまたがって、課税所得をマイナスにできる。法人がリストラをする場合、多額の欠損金が出るが、この制度により将来に繰り越せるので、リストラ後利益が出ても、法人税に取られないで済むので、リストラを促す作用もある。
 この影響が大きく出るのは銀行業界だ。銀行は低金利で随分国に助けてもらいながら、繰越欠損制度をフルに活用し、利益を上げながら長年税金を納めてこなかった。今回繰り越せる範囲が100%から80%に減るので、繰越欠損金を理由に法人税を逃れることができなくなる。一般庶民からすると、ざまぁ見ろ、と言ったところかも知れない。今年の銀行は好決算、今年にこの改正があったら、銀行もかなりの税金を払うことになったのだが。ただ今年の好決算は債券取引によるところが大きいので、来年はどうなるか分からない。

中小法人についての特例

 なお中小法人については、欠損金の繰越控除の利用制限はありません。中小企業の軽減税率も3年の時限措置で15%に引下げになりました。