未上場株にご用心

緊急業務停止命令の発動

 11月17日、証券取引等監視委員会(SESC)が、株式会社大経に対して金商法192条1項に基づき、東京地方裁判所に対し、大経とその代表取締役らに対して、無登録で、株式会社生物化学研究所の未公開株取引の勧誘を行い、今後も行う可能性が高いとして、当該業務を停止するよう申立てを行った。緊急停止命令の初めての適用ケースだという。この会社は、ほかにも、応微研、ビーシーエス、ディー・ジー・コミュニケーションズ、イー・マーケティング等の未上場株取引を勧誘していたらしい。

無資格ということでの申立

 この会社がどのようなセールストークをしたかは不明だが、金商法29条で「金融商品取引業は、内閣総理大臣の登録を受けた者でなければ、行うことができない。」とあるから、セールストーク如何にかかわらずこうした禁止命令が可能になる。
未上場株の場合、新規上場で巨額の利益を得られるというセールストークが有効なため、こうした投資会社が跋扈することになる。上場しなければその会社のせいにすればいいし、そもそも未上場のため適正な価格がいくらかもはっきりしない。当該未上場会社が発行した目論見書などのコピーも付けて渡せば、そういった儲け話も真実味を帯びてくるという具合だ。
 真剣に新規上場を考えている会社にとっては、こうした動きは良い迷惑で、こうした儲け話に載らないよう会社のHPで掲載する企業もある(実際そういう相談が企業側から有り、そうするようアドバイスした)。

被害回復の手立ては?

 こうした事件がある都度思うのだが、こうした会社についての被害救済の在り方をどうしたらいいかだ。証券会社の場合、投資者保護基金というものがあって、基金からの救済が図られるが、問題はこうした無認可業者が詐欺的な行為を行ったとした場合の被害回復だ。投資家一人が騒いでも、結局その人間だけの救済で終わるし、個人の調査能力には限りがある(無認可ということだけでは賠償請求できない)。
 課徴金を被害者賠償に充てられないか、という立法論もあり、傾聴に値する。行政が無認可を口実に強制的調査を行い(国センの情報も有効活用する)、実際被害があれば、課徴金を課し、被害者の救済に充てる、ということができれば、こうした被害も減るのではないか。とまぁ、乱暴な議論でごめんなさい。
 SESCは登録業者の指導監督が主であるから、無登録業者取り締まりの部署を設けてもらわないと、無登録業者に対する192条1項の活用も十分期待できないのではないか。米国では同種の緊急停止命令がバンバン行われているという話だ。