相続税強化の動き

相続税を納税するのは全体の4%

 相続税を何%くらいの人が納めているか、ご存じだろうか。答えは4%。96%の人が相続税を納めていない。現行、「5000万円+1000万円×相続人数」が相続税の非課税枠が認められている。相続人が妻と子2人だけの場合、8000万円以上の遺産がないと相続税は発生しないのである。

相続税非課税枠定額部分が5千万円から3千万円に引下げ

 昭和62年には相続税を納めた人の割合は8%だった。当時は土地バブルで、相続税の負担に苦しむ人が多く、その後、非課税枠が引き上げられて、現在の非課税枠が決められた。現在は当時に比べて、地価もかなり下がっている。そのため、以前から非課税枠を引き下げる動きもあったが、なかなか現実化しなかった。しかし、今回いよいよ政府税調は5000万円の定額部分を引き上げる方針を固め、現在3000万円台に引き上げる案が有力だと言う。

孫への資産異動は促進

 他方、親子間の生前贈与を促進するための「相続時精算課税制度」で対象を孫にも広げる。 同制度は2500万円まで贈与税がかからず、相続時まで課税を繰り延べる仕組みだが、これを孫にまで広げることで、孫への資産移転を促進しようというのだ。
 日本は多額の個人資産が高齢者に集中しているため、これが消費に回らない。そこで高齢者の資産を若年層に移転させて消費を活発化させようと言うのである。
 高齢化が進んだ日本では、80歳を超える高齢者も多い。その子は既に定年になっている。となれば、もっと消費性向が強い孫の世代に資産移転をさせようということだ。

取れるところから取るのが税金の基本

 相続税の非課税枠の引下げには、もう一つ、人口動態の変化が絡んでいる。今後日本の人口構成は高齢者の構成比が高まり、現役労働者の比率はどんどん下がって行く。税収を確保しようということであれば、高齢者の資産を狙って相続税を強化するのは当然のことと言える。今後も長期的に相続税の強化は進んで行くに違いない。