日本振興銀行 破綻 

日本振興銀行破たん

 振興銀行は、貸出金総額の7割強の2837億円が大口融資先で、これらへの貸付額は1社平均30億円にもなった。それがSFCG等の商工ローン業者だったり、木村剛が主催する中小企業振興ネットワークの企業だった。前者は銀行がどこも及び腰だったところに貸し付けたもので、貸倒リスクが高いのは当たり前。後者は迂回融資の道具に使われていたという。
 03年足利銀行が破綻した際は、金融業が預金保険法102条を発動。同行を国有化し、その結果預金はすべて保護された。しかし今回の振興銀行では、国有化=公的資金投入は行われず、破綻処理が行われた。もっともペイオフ制度が利用されるので、預金も1000万円までは保証されるが、それ以上は保証の限りではない。

決済性預金がない特殊な銀行

 金融庁が破綻処理に踏み切った理由は、三つある。第1の理由は定期預金しか扱っておらず、普通預金当座預金と言った決済性預金を扱っていなかったことである。もし当座預金を扱っていたら、同行をメインにしていた企業は手形も落とせなくなり、同行に給与を入れていた個人は明日の食事も買えなくなる。しかし同行は定期預金しか扱っていない。定期預金とは、余った現金を置いておく口座だ。この預金がふっとんだとしても、つぶれたりする会社、生活資金に窮する個人は余りいないだろうということだ。

銀行村の住人でないため、システミック・リスクと無関係

 第2の理由は、他の銀行との貸借もあまりなく、他の銀行へ破綻が波及しないことだ。システミック・リスクと言う言葉をご存じだろうか。個別の金融機関の支払不能等や、特定の市場または決済システム等の機能不全が、他の金融機関、他の市場、または金融システム全体に波及するリスクのことを言う。現在、個々の金融機関等が、各種取引や決済ネットワークにおける資金決済を通じて相互に網の目のように結ばれている。そのため、一つの銀行で起きた支払不能等の事故が発生すると、決済システムや市場を通じて、またたく間にドミノ倒しのように他の金融機関に波及していくからだ。振興銀行は銀行共通のATMシステムに加入していない、特殊な銀行だった。

公的資金という名の国民の血税をつぎ込むことへの遠慮

 第3の理由は、無茶苦茶な経営をしていた振興銀行に国民の税金をつぎ込むことは国民の理解を得られないということだ。政府は公的資金という言葉をよく使うが、要は国民の血税だ。霞ヶ関の役人は、「公的資金」なる言葉を作って、さも雲の上から出てくるようなイメージを作り上げた。そのため公的資金注入と言っても、国民の反発が起こりにくい。マスコミもこうした霞ヶ関の役人の悪知恵を知ってか知らずか、公的資金なる霞ヶ関用語を無批判に使っている。はっきり国民の税金という言葉をマスコミが使えば、役人もこうした税金の無駄遣いはやりにくくなる筈なのだが。