日立、帝人の脱希土類の代替技術

モーターに不可欠なレアアース

 電気自動車やエアコン等のモーターには永久磁石が不可欠であるが、こうした磁石にはレアアースネオジム、ディプロシウムが使われている。ネオジムは磁力を強め、ディプロシウムはネオジム磁石の耐熱性を高めるために必要となる。

代替技術の開発

 レアアースは高価なため、それらを使わずに同じ効力を得られるよう技術開発が進んでいる。10年9月10日付日経にもそうした成果が紹介されていた。モーターは永久磁石でできた磁界の中で、電流をコイルに流した回転子に磁力をもたせることで動いている。
 日立は、酸化鉄を使った磁石が、回転子に磁力がより強く働くようにモーターの構造を変えることで、帝人は回転子に永久磁石を組み入れると言った逆転の発想で、こうしたレアアースを使わずに済む代替技術を実用化ししつつあるという。

問題はスピード

 こうした代替技術の開発は好ましい限りだが、これが実用されるには最低1,2年かかるという。しかし時間はそれまで待ってくれない。中国が最近レアアースの輸出量を規制しているため、ネオジムは年内にも調達が困難になるという。各メーカーとも在庫もあろうが、供給が止まったら1,2年先の新技術を待つ余裕は全くない。そうなったらどうなるのか。ここで登場するのが中国企業だ。彼らは言うだろう。「私たちの国でモーターを作るための合弁企業を作りませんか。国内のメーカーになら輸出規制は及びません。ただうちが51%の株を持ちますよ。仕方ないんですよ。国の規制で資本の過半数は国内企業が持つ必要がありますから」「え?うちの技術がそちらに筒抜けになるって?そんなこと言っている場合ですか。うちらの協力が無いとモーターは作れないんですよ」。
 レアアースの9割以上が中国産という現状では、こういった筋書きが現実のものとなる可能性が大きい。

財界代表団、鼻であしらわれる

 現在、日本から日中経済協会代表団が訪中している。団長は張富士夫トヨタの元社長だ。張さんは9月8日李克強副首相との会談で、「レアアースの輸出管理な環境問題も背景の一つと聞いている。日中で技術交流を始めてはどうだろうか。」と環境技術の提供を申し出たが、「乱開発を抑えるために規制している。」と相手にしてもらえなかった。
 それはそうだ。中国が欲しいのは環境技術なんかではなく、日本企業が世界一の技術を持つ、電池、新素材技術だからだ。早く他の先進国と足並みをそろえないと、大変なことになる。