村木元局長 無罪判決

事件の概要

 厚労省文書偽造事件。自称障害者団体「凛の会」が、身障者向けの郵便割引制度に目を付け、厚労省から偽造証明書を貰い、これを利用し請け負ったDMの送付に割引きを受け、不正の利益を得たという事件だが、この事件、一介の検事が起訴した事件ではない。大阪地検特捜部が起訴した事件だ。
 検察が描いた事件の構図は「凛の会の倉沢会長が、ベスト電器の部長と共謀、某国会議員に働きかけ、同議員が村木厚労省元局長に偽造の証明書を発行するよう働きかけた。村木元局長は右働きかけに応じ、部下の上村係長に偽造証明書を発行させ、これを倉沢会長に直接手渡した。」というものだった。

調書43通中34通が証拠として採用されず

 部下の上村元係長は、捜査段階では「村木局長から頼まれて、証明書を偽造して村木局長に渡した」と供述、その旨の調書にもサインしていた。しかし、裁判になって一転して供述を翻し、自分が単独でやったと主張。このため今回の判決は無罪になるのでは、と早くから言われていた。というのも5月に裁判長が上村元係長らの供述調書43通中34通を「誘導した可能性がある」として証拠採用しなかったからだ。普通ある話ではない。
 無罪判決の決め手となったのは、倉沢被告が国会議員に会って依頼をしたという日に当該議員がゴルフに行っていたこと、倉沢被告が村木局長から証明書を手渡されたという日に倉沢被告の手帳では別の用事があったこと、が理由である。
 検察は、客観的証拠を固めるか、他の周辺事情から、もし公判で証言を翻しても理詰めでその矛盾をつけるようにしないと、公判は維持できない。

主任弁護人は弘中惇一郎弁護士

 主任弁護人は弘中惇一郎弁護士。ロス疑惑三浦和義薬害エイズ安部英、さらには武富士武井保雄ライブドア堀江貴文らの弁護人を務めてきた、刑事弁護のプロ中のプロだ。